年金が低すぎる人に少し加算を、という簡単な話のはずが

今回の年金改正案の中に「年金が低すぎる人に加算を」という案があります。老後の所得であるはずの年金なのですから、年金額があまりに低すぎる人は少しアップしてあげよう、といわれれば簡単な話のように思います。

最初に政府が考えていたのは、「国民年金(老齢基礎年金)の額が一定額以下の人は一定額まで引き上げるか一定額を加算する」ような簡単な仕組みだったようです。

ところが、厚生労働省の審議会(社会保障審議会年金部会)に検討を諮ったところ、簡単な話ではないことが分かってきます。なぜなら、「低年金の人は、未納期間が長い人(厳密には免除期間のある人も年金が下がる)」であり、「低年金の人の年金増額は、払うべき保険料を未納していた人の低い年金額を穴埋めしてあげる」ことになるからです。

確かに「国民年金保険料を40年ちゃんと納めなくても、何年か分は国が補てんしてくれる」と思えば、悪意ある人が保険料を納めないような恐れがあり、これはモラルハザードになってしまいます。そこで、「未納期間がある人については年金額のアップも控えます」という修正案が出てきます。しかし、これが不毛な議論の始まりでした。

年金額が少ない人ほどアップ額も少なくなる矛盾

議論で指摘されたのは「未納期間が長い人は加算する額は少なくするべき」「免除期間がある場合は未納より上乗せしてもいい」のような論点です。このうち後者の加算については所得が低い等の理由できちんと手続きをして保険料免除を受けていたわけですから特に問題となりません。問題は前者です。

「未納期間が長い人は年金額のアップも少なく」すると、未納者へのペナルティの要素が強まります。ちゃんと納めなかった人には因果応報があるということになるからです。ここまではいい感じがします。ところが「低い年金額の人は未納期間が長い人」なのですから、低い年金額の人ほど加算額も少ないということになってしまいます。これは本来の目的と矛盾します。

一方で、昨今巻き上がった生活保護の不正受給の問題なども合わせて考えると問題はますます複雑になってきます。なぜなら、全く年金収入がなく、資産もなく、頼れる親族のないお年寄り(単身者)が受けられる生活保護額は国民年金の額とほとんど同じになってしまうからです(巷間いわれるほど生活保護額は高くない)。

これも制度上の大きな矛盾です。下手をすれば、「まったく年金保険料を納めなくても、生活保護で同じくらいもらえる」ということになるからです。

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