女性の糖尿病が悪化しているという気になる論文があります。肥満の多い米国の調査ですから日本女性とは同一視できませんが、体の仕組みとしても糖尿病は女性に荷が重いようです。

糖尿病男性の全死亡率は減少中だが、女性は…

2007年8月に発表された米医学誌Annals of Internal Medicineによると、1971年から2000年にかけて男性の糖尿病者の全死亡率が着実に低下しているのに対し、女性では改善が見られませんでした。

それに加えて、糖尿病のある人とない人との平均余命の差が、男性では7.5年なのに対し、女性では8.2年と更に差が広がっていました。どうも女性の糖尿病はよくなっていないようです。

もちろん、体の構造が男性と女性では違いますし、生理機能も必然的に相違します。ただ、最近の研究によると、米国では医師の治療が糖尿病の男性と女性では相違が見られ、そのギャップが女性にマイナスになって糖尿病女性の死亡率の好転に結びつかないのではないか、と考えられています。

女性の不利な条件とは?

どこの国でも女性のほうが男性より長生きです。でも、女性が糖尿病になるとこの優位さを失ってしまうようです。

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米国女性が糖尿病になると、心臓病のリスクが糖尿病のない女性に比べて6倍も高くなります。男性では2~3倍高くなるだけですが。しかも、糖尿病女性の心臓病発作はより致命的になります。

このことはフィンランドの研究でも同じ結果が出ましたが、高齢の糖尿病女性が心臓発作を起こすことはとても危険な状況です。女性の心臓発作には、女性特有の心臓らしからぬ別の症状が出ることがあって、治療の遅れの原因になります。

そのいろいろな症状については「糖尿病の女性は心臓病リスクも高い!?」で詳しく解説してあります。ご参照ください。心臓発作だったのに歯科医へ行ってしまった女性のエピソードには驚きますね!

また、心臓病予防に効果のある食事については「女性と糖尿病と心臓病と魚」で取り上げています。

腎臓も糖尿病があると、女性のほうが悪くなる傾向があります。一般論としては男性の方が腎臓病になりやすいのですが、閉経後の女性は男性並みのリスクになります。ところが女性が糖尿病になると、年齢に関係なく男性並みの腎臓病リスクになると考えられています。

なぜ女性が糖尿病になると腎臓病になりやすくなるかは研究中ですが、女性ホルモンのエストロゲンが関係しているのでは? と考えている研究者もいます。女性が糖尿病になるとエストロゲンが低下、その代償としてテストステロン(男性ホルモン)が上昇して男性並みの腎臓病のリスクになるという仮説ですが、その因果関係は不明です。

もし、性ホルモンのバランスが糖尿病のある女性の腎臓病に関係するのなら、ホルモン補充療法が糖尿病女性の腎臓病予防になる可能性があるので更なる研究が待たれます。

糖尿病とセックスライフの話題になると男性のEDばかりが話題になりますが、女性でもリビド(性欲)低下、痛みやかゆみ、不妊や妊娠などで大きな負担を引き受けることになります。「糖尿病の女性必見!乳房のしこり・SLL」、「糖尿病のある女性は、尿路感染症にご注意!」でも解説しましたが、女性ならではの課題もあります。また、骨粗しょう症、見落された合併症(1),(2),(3)も女性の重荷です。

以上のような数々の女性特有のハンデを負いながら、どうも医師から効果的、積極的なケアを受けていないという論文が発表されています。女性の長寿神話が医師を油断させているのかも知れません。女性特有の病歴を軽視せずに、慎重にモニターすることを医師だけでなく本人も十分に気をつけることが望まれます。

また、「うつ」も糖尿病の女性に男性の2倍も多く見られます。糖尿病がうつを引き起こし、うつが血糖コントロールを更に悪くします。糖尿病とうつを併せ持つ女性は健常者よりも2倍も早死することを発表した論文もあります。

不思議なことに糖尿病の男性と「うつ」の関連を調べた研究はしばらくありませんでした。やっと2006年のPublic Health誌にその発表がありましたが、なんと糖尿病とうつは女性にみられる関係であるのに対し、男性については関連はないそうです。

それにしてもジェンダーギャップは糖尿病の女性にとって重いですね。

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