不動産広告の表示については規約によって細かく定められている
この規約および施行規則が改正され、平成24年5月31日に施行されました。そこで今回は、売買物件の広告における主な変更点を確認しておくことにしましょう。なお、規約上の文字の追加、変更や用語の言い換えなどだけで実質的に従来と変更がない部分、および賃貸物件の表示については説明を省略しますので、詳細に知りたい人は不動産公正取引協議会連合会のページにてご確認ください。
二重価格表示が土地や中古住宅でも可能に
販売価格を値下げした場合などに、過去の販売価格と新しい販売価格とを併記する「二重価格表示」については、従来、一定の要件のもとで新築建物(建築後2年以内で、居住の用に供されたことがない建物)の場合にのみ認められていました。今回の改正により、その二重価格表示が土地(現況有姿分譲地を除く)および建物(共有制リゾートクラブ会員権を除く)の場合でも認められることになりました。通常の土地や中古マンション、中古一戸建ての広告でも、これからは旧価格からの値下げを強調したものが増えるかもしれません。
ただし、架空の旧価格表示が違反になることは当然です。過去の販売価格の公表時期および値下げの時期を明示することが必要なほか、過去の販売価格が「値下げ前3か月以上にわたり実際に販売のために公表していた価格であること」「値下げの時期から6か月以内に表示するものであること」などが要件となります。また、これらの事実について客観的に明らかにできる資料が存在することも求められています。
完成予想図などの表示が厳格に
モデルルームや写真、CG、見取図、完成図、完成予想図の表示について、従来から「実際のものよりも優良であると誤認されるおそれのある表示」が禁止されていましたが、今回の改正でこれに加えて「事実に相違する表示」ができなくなりました。これまで「図はイメージです」のような断り書きを付けたうえで、見栄えを良くするような表現を加えた表示、あるいは邪魔なものを削除、加工した表示なども見受けられましたが、それが事実に相違するのであれば、今後は不当表示として扱われます。
ただし、CGや完成予想図などで100%完全に現実を再現することはできませんから、どこまでを「事実に相違する」と判断するのか、その線引きは曖昧です。しかし、いずれにしても以前より厳格にチェックされることにはなるでしょう。
また、物件の取引に関する事項について事実に相違する表示により、不当に顧客を誘引すること、および公正な競争を阻害するおそれがある表示をすることが従来より禁止されていましたが、今回の改正で「一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれのある表示」も禁止されました。
周辺の建築計画などは他社のものも表示対象に
物件の周囲に新たな建物が計画される場合のように、日照などの環境条件に影響を及ぼすおそれのある建築計画や宅地の造成計画があるとき、これまでは自社(広告主)が行なうものだけが表示の対象になっていました。しかし、今回の改正により他社による建築計画の場合でも、それを知り得た場合には「その旨およびその規模」を表示しなければならないことになっています。畳数の表示を明確に
居室などの広さを畳数で表示する場合、これまでは中古住宅などで1畳あたりの面積が最低基準の1.62平方メートルに満たないときでも、その旨と畳1枚あたりの面積を明示すれば表示が認められていました。今回の改正では、このただし書きが削除され、どんな場合でも「広告表示における畳1枚あたりの広さは、1.62平方メートル以上であること」が求められます。なお、この広さの計算にあたっては壁心面積が基準となるため、壁の内側で測るときにはこれよりも若干狭くなる場合があります。ちなみに、平成23年11月11日に不動産公正取引協議会連合会から明示された「DK・LDKの広さ(畳数)の目安となる指導基準」では、居室(寝室)数が1部屋の場合のDKは4.5畳以上、LDKは8畳以上です。また、居室(寝室)数が2部屋以上の場合のDKは6畳以上、LDKは10畳以上となっています。
その他の主な改正点
住宅ローンの返済例を表示する場合には、「借入金、返済期間、利率などの返済例にかかる前提条件を併記すること」とされました。従来よりも返済例の表示が細かくなることと思いますが、その前提条件をしっかりと読み込むことが大切です。市街化調整区域に所在する土地に関しては「用途地域に代えて市街化調整区域である旨を明示すること」、また、一定の要件に該当するものについては「住宅などを建築するための許可条件を記載すること」といった規定の整備が図られています。
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