『はじめてのおつかい』の主人公は、頑張り屋の優等生タイプ
満面の笑みを浮かべた少女の表紙が印象的なこの作品は、『はじめてのおつかい』です。筒井頼子さんと林明子さんの名コンビが、生まれて初めて1人で行くおつかいや、その時の主人公の心情を丁寧に描いて人気の高い作品です。初めてのおつかいという特別なシチュエーションによって、通いなれた道や友だちとの会話といった見慣れた風景がいつもと違う特別な空間に変化して、読者にも日常の中の非日常を味わわせてくれます。
それでは、こちらも主人公の行動を見てみましょう。
■主人公の名前・年齢など
名前はみいちゃん。姓は、郵便受けに「尾藤三」と書かれている場面があるが、読み方はわからない。年齢も不明だが、初めて1人でおつかいに行くことから、4~5歳と推定。まだミルクを飲んでいる赤ちゃんの弟または妹がいる。
■おつかい前の準備
ママに頼まれ、急遽おつかいに行くことになったため、心の準備なし。そのため、スタートからかなりの緊張感あり。
■おつかい中の行動
ころんで膝をすりむいたり、お金を落としたりとアクシデントが続く。主人公には、お店の人に大きな声で呼びかける事ができないなど少々気弱な面もあるが、対応は冷静でしっかりしており、お姉さんらしさを感じさせる。いわゆる優等生タイプか。
■おつかい後の処理
お目当ての牛乳を購入できて安心したためか、お釣りをもらい忘れる。大きな失敗だが、お店のおばさんに助けられて、事なきを得た。心配して迎えに来た(?)ママを見つけ、走り寄る姿が微笑ましい。
それでは、主人公の様子からこの作品の魅力を考えてみましょう。主人公からは、幼いながら母親や家族の役に立ちたいという気持ちが強く感じられます。お話全体から、そのけなげさが伝わり、読者は次々に起こる小さな事件にハラハラ・ドキドキしながら、知らず知らずのうちに主人公を応援していることに気付くでしょう。そんな主人公の成長に寄り添えることも、読者にとっては嬉しいことですね。
もちろん、この本の1番の魅力は、子どもたちが日常で体験する出来事や感情を、絵本の中の主人公を通して追体験できることだと思います。けれども、昭和を舞台にするこの作品が、現在の子どもたちには実感しにくい場面があるにもかかわらず、今なお大きな支持を集めているのは、優しくて何事も一所懸命な主人公の姿に負うところも大きいように思います。
【書籍DATA】
筒井頼子:作 林明子:絵
価格:840円
発売日:1977/4/1 (ペーパーバックでの初出は1976年)
出版社:福音館書店
推奨年齢:3歳くらいから
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