国家公務員の退職金は大企業の退職金と同程度でもいい?
よく「民間の平均」といいますが、中小企業と大企業で退職金の違いがあるのが現実です。これは不公平ではなく、より能力の高い者がより高い売り上げや生産性をもたらしたことの反映として退職金が高くなると考えるのが妥当です(能力のない大企業社員には少ない退職金を払うべきと言う問題は各企業で解決すべきですが)。人事院調査では民間の退職金について企業規模ごとの集計もしていますが、従業員1000名以上の企業だと、勤続38年の定年退職者は2878.1万円となっており、大企業の退職金は国家公務員の水準とほぼ同程度だということが分かります(約70万円国家公務員が高い)。
冷静に考えてみれば、国家公務員の能力が、上場企業の社員と同じくらいないと(あるいは上回らないと)日本を任せるには不安があると思います。だとしたら、退職金水準も同じくらいでいいんじゃない?と思ったりもします。
民間企業においては、退職金水準や賃金水準は優秀な人材を集める重要な要素です。安いところに好んで働きに行く人はあまりいません。簡単に国家公務員の退職金を400万円下げよう、ということが長い目で見て人材不足のきっかけにならないといいのですが。乱暴な議論をみると、そんな心配をしてしまいます。
退職金を下げるのはきちんとした議論のもとで
確かに退職金や企業年金を引き下げる例は民間ではよく行われています。企業の業績が下がれば、賃金、賞与、退職金の見直しを行い、また景気が回復すれば引き上げを行うこともあります。いわば日本という国の業績が下がっているとすれば、日本という会社で働いている国家公務員の退職金が下がるのも仕方ないような気がします。
ただし、賃金や賞与を下げるのと、退職金を下げるのは少し話が違います。賃金や賞与は働き続けている人に払うものですから、将来回復する可能性もあります。しかし退職金は「辞めた時点」に一回限り受け取る(辞めた時点の金額で年金受取する)ものです。そのお金でその後の20年の老後を生き抜いていくことになります。
つまり、「景気が悪いときに退職した人」は少なく、「景気がいいときに退職した人」はたくさんもらえるというのは退職金としてあまりいい考え方ではありません。もともと退職金は、本人の長年の働きが支払いの原動力ですから、退職時の会社(国)の都合だけに振り回されないようにしておく必要があります。
民間企業においても、著しい不利益変更は簡単に認められません。企業年金においては、厚生労働省が認可しないこともあります。今回の「400万円カット」についても、労組との話し合い、法律改正(国家公務員退職手当法改正)などが必要になるでしょう。400万円カットは本当に適当か、あるいはもう少し控えたほうがいいのか、じっくり議論していただきたいところです。
追伸
ここまで書くと「公務員擁護ですか?」と聞かれそうなので、念のため追記しておきますが、安易な公務員退職金カット論はブーメランとして「安易な会社員退職金カット」になる、ということです。
私の意見をあげれば、公務員の400万円カットは行わず、その代わりすでに発生している受給権を確定拠出年金に移行、その後の運用は自己責任で投資させてはどうか、と思います。
これならば、モデル額の半額程度を国が負担すればよくなり(残りは自分で運用で稼がせる)、公務員側にとっては景気に左右されてカットされるような影響は受けずにすみます。
また、国の景気が良く株価も上がれば、自分の退職金が増えるわけですから、熱心に仕事をするようになるでしょう(公務員の自分の仕事が自分の年金額アップになる!)。
感情論よりよほど合理的かと思いますが、いかがでしょうか。