幹線道路、大規模店がないため、
昔ながらの商店街、住宅街が健在

住宅街

幹線道路がないため、駅から少し離れると交通量が少なく、静かな住宅街が広がる

子どもの頃、中央線の西荻窪駅(杉並区)までピアノのレッスンに通っていました。バスを降りて先生宅までの間には瀟洒な洋館や風情のある日本家屋があり、一方でちょっと突飛な恰好をした人が集まる店があり、子ども心にしゃれた街だなあと思ったものです。その後、何度訪れても、この街は子どもの頃の印象のまま。いや、年月を経て、さらに磨かれているようにも思います。

 

商店街

駅を中心にいくつもの商店街が連なり、買い物だけでなく、飲食にも便利

その要因のひとつとして挙げられるのは、駅周辺に大きな通りがないという点です。そのため、大規模な商業施設が進出する余地がなく、昔ながらの商店街、個人商店が多く残されているのです。住宅街も同様で、早くから開発はされてきており、区画の大きな住宅はあるものの、それほど大きく、高層の建物はありません。昭和の早い時期の住宅街のゆったりした面影が残されているのはそのためだろうと思います。

 

魯山

善福寺川近くにある老舗の骨董品店。古民具の他、作家ものの器なども揃う

もちろん、当時からすると変わったものもあります。その筆頭が骨董品店。地元で配布されていた西荻窪アンティークマップによると、現在、周辺には61もの骨董古道具、リサイクル、古着、中古レコード、古美術、西洋アンティークなどの店があるのだとか。中には創業以来数十年という店もあるものの、ここ20~30年ほどで増加、アンティークの街として知られるようになりました。

 

古い商店を改装

駅南側、古い2階建ての店舗を今風に改装したレストランやブティックなどが並ぶエリア

また、古い住宅や店舗を改装した今風のカフェやブティック、書店なども増えています。特に駅南口から五日市通りへ向かう松庵通り沿いには地元に住む女性オーナーが経営する店が増え、女性客が多いことから乙女ロードなどという名称も。どの店も品数を競うのではなく、店主の好みや個性が前面に出た、友だちの家を訪れるような居心地の良さが売りのようです。

 

童子の像

街角の公園にさりげなく置かれていた相撲を取る童子の像

かつてなかったものといえば、街のあちこちに飾られていた彫刻家籔内佐斗司さん(奈良のせんとくんの作者)の西荻窪六童子もそのひとつ。住み心地とは関係はありませんが、駅前、街角の公園などに置かれていました。

 

こけし屋、ホビット村、善福寺公園……、
文化と自然が共存

こけし屋

昭和画壇で活躍した洋画家鈴木信太郎の女性像が今も変わらずこけし屋のシンボル

逆に以前と変わっていないものもたくさんあります。たとえば、西荻窪のランドマークとも言うべきレストラン、こけし屋。ここは中央線沿線で初めてフランス料理を出した、当時の最先端スポットで地元の方がお使い物にすると言えば、ここのケーキが定番中の定番。かつては沿線に住む作家や画家などが集まったことでも知られています。

 

 

ホビット村

現在のホビット村。当時はコンクリートがむき出しの建物そのものが異質に見えた

そして、子ども心に変わった格好の人たちが集まっていると思っていたのは70年代にヒッピームーブメントの拠点となったホビット村。1階には日本で最初に無農薬野菜の販売を行った八百屋さんがあり、2階にはレストラン。子どもの頃の印象よりは小さなお店ですが、今も同じように営業を続けています。

 

善福寺公園

取材に訪れたのはちょうど桜の季節。水面に桜が写り、見事な風景だった

地元の桜の名所、善福寺公園も往時と変わりません。ここは善福寺池が公園の半分ほどを占める公園で、武蔵野三大湧水池のひとつ(ちなみに残りの2つは石神井公園の石神井池と三宝寺池、井の頭恩賜公園の井の頭池)。駅から距離があることもあり、酔客で賑わうような公園ではなく、のんびり自然を楽しめる場所です。

 

東京女子大学

東京女子大学はちょうど杉並区と武蔵野市の境に立地、超えると武蔵野市に

その善福寺公園近くにあるのが東京女子大学。大正7年の開学で、初代学長はかつて5000円札に描かれていた新渡戸稲造です。構内には1920~30年代に建築された国の登録有形文化財になった建物もあり、落ち着いたたたずまいのキャンパスです。

 

商店街

商店街の中にはおいしいパン屋さん、自家製のソーセージ屋さんなどが点在、地元の舌の肥えた人たちに支持されている

もちろん、商店街、住宅街も冒頭で述べた通り、さほど変わっておらず。ただ、子どもの目で見ていた時には単に店があると思っていただけですが、今、どんな店があるかを大人の目で見ると、独自のこだわりのある店、目立たないけれども知る人ぞ知る店などがあり、レベルの高さが分かります。

 

飲食店街

南口には飲食店の集まる路地もあり、夕方以降賑わいを見せる

子どもと大人の目の違いでいえば、南口の飲み屋街も忘れてはいけません。子どもの頃は近づいてはいけない場所のように思えましたが、今となっては自然と引き寄せられる場所。夕方4時ともなれば、すでに焼き鳥の煙が立ち上り、常連さんが路上で飲み始める時間で、取材時にもついつい一杯、手を出してしまいました。 競争があるからでしょう、飲食店の価格は土地、物件の価格に比べると全般にお手頃です。

 

続いては中央線西荻窪駅の気になる住宅事情を見て行きましょう。