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大船、観音様が見守る、鎌倉の台所

線路沿いにそびえる観音像とかつて「男はつらいよ」と生んだ松竹大船撮影所、そして活気ある商店街が大船の3大名物。鎌倉市の中では庶民的で賑やかな雰囲気の街、大船の住み心地をチェック!

中川 寛子

執筆者:中川 寛子

住みやすい街選び(首都圏)ガイド

古都鎌倉とは一味違う
庶民的、モダンな雰囲気が特徴

大船駅東口
駅構内に飲食店街、隣接して駅ビルがある、神奈川県内でも有数のターミナル駅大船
根岸線、横須賀線、東海道線が乗り入れ、横須賀線、東海道線が分岐する駅、大船。駅の西側にそびえる白い観音像でお馴染みのこの街は鎌倉市の北西部にあたり、市の中心部と市外を結ぶ交通の要衝。湘南新宿ラインが利用でき、また江ノ島に向かう湘南モノレールの始発駅でもあります。駅自体は横浜市との境界にありますが、駅長室が市内にあることから、鎌倉市内の駅と遇されているという、ちょっと変わった駅でもあります。

大船駅と周辺の位置関係は?

大船周辺
大船の足回りと周辺の位置関係をまとめたもの。現在賑わっているのは商店街のある駅東側だ

駅西口
駅西口側から鎌倉方向を望む。市街地の向うに丘陵があることが分かる。手前を流れるのが柏尾川。かつては氾濫を繰り返した川だ
さて、その大船駅は柏尾川沿いにあり、駅とその周辺は丘陵地の多い鎌倉市にあっては平坦で低い場所になります。そのため、横須賀線で北鎌倉、鎌倉方面、湘南モノレールで江ノ島方面に行く場合は、それぞれひとつ山を超える感じに。そうした立地的な特徴、歴知的な違いからか、大船は同じ鎌倉市内にありながら、古都という風情の強い北鎌倉、鎌倉とはいくぶん、雰囲気が違います。緑の豊富さは同じなのですが、より庶民的でモダンな印象があるのです。以下、具体的にその印象の要因を見ていきましょう。

相模湾の魚や地元の野菜、
レトロな飲食店が集まる駅東口

仲通商店街
手頃な価格で鮮度の良い品が買える東口の商店街。特に八百屋、魚屋さんが目につく
庶民的な賑やかさを代表するのが駅東側に広がる商店街です。ここには商栄会商店街、駅前商店街、仲通商店会の3商店街が隣り合い、連日買い物客でごった返しています。特に仲通商店会には戦後の闇市の雰囲気を残す、アメ横を思わせるような生鮮食料品を売る店が軒を連ねており、鎌倉の台所とも称されるほど。相模湾で取れた新鮮な魚、地元産の野菜などの品揃えは圧巻で、主婦としては近くにこんな商店街があったらと羨ましい限りです。大船の味、鯵の押寿司もこんな土地柄だから生まれたわけです。

飲食店街
映画関係者ゆかりの店などもあり、いずれも安くおいしい。中には遠方から来る常連がいる店も
また、商店街周辺には飲食店街があり、こちらでもおいしい地元の魚は名物。さらに昔風のキャバレーやスナックなども点在しています。昭和レトロというべきか、鎌倉ではあまり見られないような猥雑な雰囲気の路地もあり、夜遊びも楽しそうです。

大船田園都市計画と
松竹大船撮影所が独特な雰囲気の源

かつての分譲地周辺
かつて田園都市として売り出されたあたり。しゃれた洋館などが作られていたそうだが、今はわずかに2軒が残るのみ
モダンな雰囲気は歴史に起因します。ひとつは関東大震災前に計画された大船田園都市計画。これは大正時代まで一面の田んぼと湿地が広がっていた大船に、当時イギリスで誕生した田園都市構想に倣って、田園都市を作ろうという計画で、大正10年に設立された大船田園都市株式会社が「新鎌倉」と銘打って宅地を分譲しています。しかし、これは震災と昭和初期の不景気で頓挫。駅東口の一部にその面影を残しています。

松竹大船撮影所跡地
かつて撮影所のゲートがあった場所。写真右手に鎌倉芸術館、奥に鎌倉女子大がある
その後、大船の雰囲気を大きく変えたのは、記憶にある方もいらっしゃるでしょう、1936年に蒲田から移転した松竹大船撮影所です。ここでは小津安二郎監督の諸作品や「男はつらいよ」を初めとする現代映画が主に撮影されています。この移転に伴い、大船周辺に映画関係者、俳優が移り住み、街のイメージアップに大きく貢献します。

芸術館通り
鎌倉芸術館の前の通りを中心に街作りが行われた。地域内には並木、広場、場所によっては桜並木などもあり、和める場所となっている
また、撮影所周辺には関係者目当てに飲食店などができ、今でも多くは地元の名店として愛されています。残念なことに撮影所は2000年に閉鎖され、跡地は現在、スーパー、鎌倉芸術館、鎌倉女子大に。しかし、旧撮影所を核に市は緑、水、桜の美しい街作りを行っており、その意味では撮影所の存在は今も市民に貢献しているといえるかもしれません。

工場
駅から10分ほどのところにある、広大な工場。電機、化粧品、鉄鋼など様々な業種の工場が点在している
もうひとつ、大船が市内の他の街と異なるのは、駅周辺、東海道線沿いなどにいくつもの工場がある点でしょう。一部、大規模マンションに生まれ変わった場所もありますが、多くは今も操業中。街の活気を支えています。

予備校のある通り
教育熱心な家庭が多いのか、駅周辺には予備校なども目に付いた
活気という意味では前出の鎌倉女子大のほか、清泉女学院、栄光学園などの私立中高も一役買っています。ことに栄光学園は進学校としても有名で、数多くの政治家、研究者、財界人などを輩出しています。

では次に気になる大船周辺の住宅事情を見ていきしょう。

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