農家にはならないけど、農のある暮らしを始める
パートナーの書斎。音楽と本がある豊かな暮らし
昔から抱いていたその疑問を、吉田さんは少しずつ行動に反映させはじめます。結婚して藤沢に移った頃から、周囲に農のある暮らしを実践している人が増えてきました。友人たちの田や畑をちょっぴり手伝ったり、短期就農講座に通ったりするうちに、知識やスキルも蓄積してきました。パートナーが、福祉関係のお仕事を通じて農を学ぶようになったこと、吉田さんが勤務していた会社での翻訳作業を、在宅でできるようになったことも、追い風になりました。
「出荷するプロ農家にはならなくとも、自分たちが食べる分だけ作る暮らしがしたい!」
賛同してくれたパートナーとともに南房総に越してきたのが、6年前のことでした。
自分たちが食べるお米は十分とれる
家のあちこちに「米」がある。頼もしい存在感
吉田さんご夫妻とお友達が耕す田は、田起こしこそ小型の耕うん機を入れていますが、手植え・バインダーを併用した手刈り、無農薬、草取りの手間を減らすために糠撒きをする程度でも、5俵(300キログラム)近くの反収を上げています。出荷が目的のプロ農家ではないので、3人ならこれで十分。そのため、吉田さんのお宅のあちこちには、籾のままのお米が所狭しと置かれています。自分たちで作った、自慢のお米!
自家製米と味噌で311を乗り切る
吉田:「311のときも、これだけの米があって、水は井戸水。さらに、自分で仕込んだ味噌が来年の分まであったので、自分たちのためにあわてる気持ちはほとんどありませんでした」
食べるものがあるって、何より安心なこと。それが心のゆとりになり、余計な物欲が起きないのかも……。