中庭アクセスと土間空間
そうした声を元に作られた建物の特徴的なデザインは、“中庭アクセス”と“土間空間”。各住戸のアプローチ動線上に入居者のコミュニケーションスペースや遊び場を配し、母親や子どもの交流を促進する工夫です。1階の各住戸は、入居者の往来や生活の気配を感じる中庭を通り、玄関にアクセス。そして生活の中心であるリビングをアクセス側(中庭側)に配し、中庭とリビングで互いの気配を感じあい、入居者同士が繋がっていくことが期待されています。
土間空間
さらに、各住戸までのアクセス動線上や子どもたちの遊び場を見守る位置に、お母さんたちが集えるスペース<お母さんステーション>が設けられ、お母さんたちの気軽なコミュニケーションスペースとなるようデザインされています。
この商品は、首都圏での本格発売に向けて三鷹市にプロトタイプ棟を着工。2012年9月末に竣工予定ですが、お母さんコミュニティ形成のためにハード面だけでなく、ソフト面での様々な試みも計画されているそうです。
コミュニティを維持するソフトの提供
しかし、コミュニティ形成は、どんなに空間的な配慮をしたとしても、住む人間の意識にかかっています。住人が共通の理念や価値観を有しているかどうかも重要なポイント。「母力」では今回、「お母さん大学」のネットワークを活用して入居者募集をするといいます。各地で開催されるセミナーでの物件紹介や、「お母さん業界新聞」発行により、ターゲットとなるお母さんたちにダイレクトにコンセプトを伝え、企画趣旨に合った入居者獲得を図るというもの。また入居者には、独自に定めた住民憲章「子育てクレド」にサインしてもらうなど、コンセプトに共感する入居者を集めるための仕組み作りを試みています。
さらに、入居後のサービス面においても独自の試みが。「お母さん大学」のネットワークを中心に、入居者を応援する「母力サポーターズ」を組織し、先輩お母さんとして毎月入居者を訪問して、日常的な交流や地域情報の提供を行います。
そして、入居時の顔合わせイ ベントや「母力サポーターズ」の活動により、入居者同士のコミュニケーションを促す。また、その交流の中から生まれるイベントなどのお母さんたちの自発的な集いに対して、「母力サポーターズ」がまとめ役となりながら様々な支援を行っていくという構想。
賃貸が社会のつながりの一助になる?
賃貸内ではなく、周辺に住むお母さんにサポーターを任せるところが一つのポイント。賃貸が近隣に溶け込んでいく糸口が生まれ、地域との繋がりを持ちにくい賃貸入居者にとっては有り難い存在に。また地域のお母さんにとっても、サポーターという役割を担うことで地域や社会と繋がっていく喜びがあります。賃貸の内と外のお母さんたち双方にとって有益な試みであり、賃貸オーナーにとっても、賃貸経営により社会貢献をしている、という満足感が得られるのも大きなメリット。引き続き動きに注目していきたいと思います。