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新耐震基準の住宅でも安心してはいけない!(2ページ目)

次の発生が懸念される大地震。いつ起きるかは分からないものの、いずれ必ず起きることを前提に住宅の耐震性を考えておくべきです。しかし、新耐震基準が施行された昭和56年以降に建てられた住宅でも、安心してはいけないケースが少なくありません。その理由とは?

執筆者:平野 雅之


平成12年の建築基準法改正が一つの目安になる

前ページで紹介した木耐協による耐震診断結果では、集計対象となっている新耐震基準建物が昭和56年から平成12年5月までに着工された住宅となっています。実はこの後、平成12年(2000年)6月1日に改正建築基準法が施行されているのです。

この改正により木造住宅では、地耐力に応じた基礎構造の規定によって地盤調査が事実上義務化、基礎の仕様の明確化、耐力壁の配置基準の義務化、継手・仕口の仕様規定の明確化、筋交いや柱の固定に関する規定の義務化などが図られました。マンションなど鉄筋コンクリート造や鉄骨造の建物についても、いくつかの規定が整備されています。

昭和56年(1981年)に新耐震基準が導入された後も、平成12年までは法律による強制力がなく、設計者の自主的判断に任されていた規定がいくつかあったため、必ずしも新耐震基準に沿って建てられているわけではないことに注意しなければなりません。

もちろん、その当時に新耐震基準に基づいてしっかりと造られた住宅は数多くあるでしょうし、旧耐震基準の時代に建てられた住宅でも十分な耐震性を備えている場合があります。逆に平成12年以降の住宅でも、耐震強度に関する事件や問題が相次いだことからも想像されるように、必ずしも安心だとは言い切れません。しかし、一つの判断材料として「平成12年(2000年)」を覚えておいたほうが良いでしょう。


行政などの対応は?

住宅ローン控除をはじめとして税金に関する特例措置では、築20年を超える木造住宅や築25年を超えるマンションなどについて「耐震性を満たすこと」を要件にしていますが、それよりも後に建てられた住宅については耐震性による判断を求めていません。また、不動産取得税では昭和57年1月1日以後に新築された住宅を一様に、新耐震基準に適合することが証明された住宅と同等に扱っています。

また、自治体による耐震診断や耐震改修の助成制度、支援事業などは、そのほとんどが「昭和56年以前に建てられた住宅」(または昭和56年5月31日以前に着工された住宅など)を対象としています。昭和56年以前の建物は危険性が高いものとして、まず耐震診断を受けるように広報をする自治体は多いものの、それ以降の建物に関して注意喚起をする例はあまりみられません。自治体が作成する耐震改修計画や資料などでも、昭和56年以降の建物は一律「耐震性あり」とみなしていることが大半でしょう。

自治体などの予算や優先順位の問題もあるでしょうが、昭和56年以降の建物における耐震性については、診断も改修もすべて自己責任に委ねられているのが現状です。


中古住宅を購入するときには

耐震性に問題のない住宅も多いはずですが、中古住宅を購入するときにはなるべく耐震診断を受けるようにしたいものです。ただし、新築時に品確法による建設住宅性能評価書の交付を受けている住宅なら、原則として耐震診断は受けなくても良いだろうと考えられます。

本来であれば中古住宅を売り出す前に、売主自身が耐震診断を受け、問題があれば耐震改修工事をしておくべきでしょうが、それがされていない中古住宅のほうが多いでしょう。一方で、買主が購入候補物件をすべて調べて回ることも現実的ではありません。

どのタイミングで耐震診断を依頼し、その費用負担をどうするのか、耐震性に問題が見つかった場合に契約をどうするのかなど、難しい判断を求められる場合もありますが、安心のためには前向きに検討することも必要です。中古マンションの場合には、売主や買主が個人で耐震診断を依頼することは困難ですから、代わりに専門家による建物チェックを受けることも考えられます。

いずれにしても、「昭和56年(1981年)の新耐震基準以降の建物だから」という理由だけで耐震性を信じることは、避けるようにするべきでしょう。もちろん、建物の耐震性だけではなく、安全のためには地盤のチェックも欠かせません。建築士など専門的な知識を有する人に、購入しようとする建物とその敷地を併せて確認してもらうことも有効です。


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