「建て替え」や「買い換え」は次の世代と話し合って決める
新築物件は高い人気です
建て替えや買い換えは、新しい賃貸事業をスタートさせることでもあります。老朽物件が新築物件になったとしても、万事うまくいくという保証はありません。賃貸経営については今後も厳しい環境が続くものと予想されますから、建て替えの場合も初めて土地活用に踏み込む際と同じく、実行する前にマーケティングを行い、慎重に採算性を検討する必要があります。
それはオーナーさんの後継者となる人の同意が得られているか、また賃貸経営に向いた人かどうか、という点です。賃貸物件が老朽化してきたということは、おそらくオーナーさんもほとんどの方が高齢者のはずです。ご高齢のオーナーさんが賃貸住宅の建て替えのために返済期間20年あるいは30年のローンを組もうとすれば、銀行は必ずお子さんを連帯保証人に立てることを求めてきます。
つまり老朽化物件の建て替えでは次の世代の同意が不可欠となり、基本的にはお子さんが賃貸経営を引き継ぐという前提で行うことになるのです。ですから建て替えを計画する前に、まず家族でよく話し合い、お互いの考えをはっきりさせておく必要があります。
建て替えのメリット
建て替えとは現状の入居者に退去をお願いし、建物を全て空にした上で解体して、新たな賃貸住宅を建築することです。建て替えの良いところは、最新の設備を導入でき、建物自体の耐久性も過去のものよりもずっと高くなっていること、そして何より築年数が0になるということです。築年数は部屋探しをする人が、第一に気にするポイントです。リノベーションではどんなに建物が美しく変身したとしても、築年数の表示は変えることはできません。年数を経た賃貸住宅を新築に変えることで、賃貸市場での人気が上がります。空室はなくなり賃料も高めに設定することができて、家賃収入アップが見込めるわけです。
建て替えのもう一つの利点として、「マイナスのスパイラルを断ち切る」ことが挙げられます。老朽化したアパートでは入居者の人気がなくなって空室が増えたり、滞納が起きたりして家賃収入が低下し、キャッシュフローが悪化しているケースが多く見られます。収入が不足しているためメンテナンス費用も捻出できず、そのためますます建物の劣化が進み人気が低下していくという負のスパイラルです。
自分の代で賃貸経営を始めたオーナーさんが亡くなった後、賃貸物件を相続した奥さまやお子さんが、先代の管理の不備のために経営に苦労するケースは非常に多いのです。ずさんな管理を行った物件は、次の世代にとっては負の遺産そのもので、残された家族に大変な迷惑をかけることになります。
お手持ちの賃貸住宅がそうした状態に陥っていたり、陥りかけている場合、思い切ってローンを組んで建て替えることで、悪い循環を断ち切ることが可能です。
建て替えには節税の面での利点もあります。老朽化した賃貸アパートや賃貸マンションは、既に減価償却がほぼ完了しているため、所得からの控除額が少なくなります。これを建て替えることで新たな減価償却費が毎年発生し、納税額を抑えることができます。
また老朽化した賃貸住宅は、ローンの返済も終わっているケースが多く、相続の際に債務控除によって相続税額を圧縮するという効果も見込めません。こちらも建て直すことで相続税を節税することができます。
たとえば築30年でローン返済が終わっているアパートを建て替える場合を考えてみましょう。計算すると、現状では相続税評価額は土地4000万円、建物300万円で合計4300万円であったとします。何もしなければそれに対して相続税がかかります。しかしこの老朽化したアパートを、たとえば銀行で8000万円借りて建て直せば、その分の債務控除がつき、相続税評価額はゼロになります。