100年店ランチ/東京の100年店ランチ

吉野鮨本店(すし/日本橋/創業1879年)(2ページ目)

屋台を中心に“江戸のファストフード”が源流の江戸前ずし。その流れを汲みながら、お江戸・日本橋で脈々と営業を続ける人気店。今回は日本橋のすし店「吉野鮨本店」をご案内します。

菅野 夕霧

執筆者:菅野 夕霧

100年店ランチガイド

煮きり醤油が塗られ、“美しい”握りずし

にぎりずし(2100円)

にぎりずし(2100円)

4枚引き戸を開けて入店すると、左手にカウンター、中央にはテーブル席、右手には小上がり(掘りごたつ)の席があります。この日は混雑する12時台を避けて、11時50分頃に訪問。すでにカウンターが満席でしたが、運よくテーブル席に空きがあり、1人でしたがそこに腰を落ち着けます。

吉野鮨本店にはランチ用のメニューが存在。握りは、1575円と2100円の「にぎりずし」、それぞれ貫数が増える「にぎりずし(大)」が2310円、3150円の計4種類が用意されています。ちらしは、1575円、2100円の2種、その他「鉄火重」なども。この日は、2100円の「にぎりずし」をオーダーしました。

ちらしずし(1500円)

ちらしずし(1575円)

運ばれてきた握りずし……薄く焼かれた自家製の焼き卵の握りと細巻以外のすべてに、“煮きり”や“ツメ”が塗られていることもあり、まずはその艶やかな“美しさ”にやられます。毎回思うことですが、海老がまたイイ色合いです。同店では、全貫がすし下駄に載せられた状態で提供されます。

酢飯は通常、酢に砂糖を混ぜて作られますが、同店では砂糖を一切使用しない赤酢と塩のみの酢飯です。酢が効いていますね。ガリも同様に“ザ・江戸前”を感じさせる酸っぱさ。“酢の強さ”については、伝統を守っている印象です。他店の話ですが、“今のすし屋のガリは甘過ぎる”という江戸前ずし職人の方の言葉がふと頭をよぎりました。好みや賛否はあれど、わたしは“酸っぱいガリ”のファンです。

原点の屋台、江戸のファストフードを体現する姿勢

にぎりずし大(2310円)

にぎりずし大(2310円)

江戸前ずしの定義は、狭義では“東京湾の魚介(のみ)を使用したすし”や“江戸や明治の技法を継承したすし”みたいなことが言われますが、広い意味では“握りずしを中心としたすし店で提供されるすし”のことを指したりします。屋台ずしが主であった江戸時代には当然“生のすし”などありません。冷蔵・冷凍、運搬の技術が飛躍的に発達した今、きっちりとした定義にはそれほど意味がないのかもしれません。

同店の箸袋

同店の箸袋

老舗店では、伝統をかたくなに守るスタイルや、良いものであれば少しずつ取り入れていくスタイルなど、継承者の判断により異なります。同店では江戸前の伝統を感じますが、提供ネタも含めて後者のようですね。

別日に友人と土曜日の13時過ぎに伺った際に、2100円の「にぎりずし」との比較をしたいという思いから、「にぎりずし(大)」(2310円)を頼みました。こちらの連載の価格レンジ、上限の2000円をちょっと超えていますが、その“違い”を知るためなので、ご容赦を。

2つのメニューの違いは、(2貫多い)貫数とイクラやコハダなど、提供内容の違いですね。その日どれくらい食べられるかなど、体調でメニューを決めればいい話ですが、好きなネタが入るかどうかの参考になればと思います。

土曜日は昼のみの営業

土曜日は昼のみの営業

同店の箸袋には、「江戸に生まれ 東京で育ち いまじゃ 日本をにぎりずし」と粋な文言が並び、目を引きます。屋台から始まり、江戸前の由緒正しい印象が強いこちらの店ですが、“ごく普通の鮨屋”を謳い、決して高級店ではないことを公言しています。

確かに店内には、高級すし店にありがちな張りつめた空気ではなく、人の温もりや居心地の良さを感じる雰囲気が……。江戸のファストフード、そんな源流を感じさせてくれる姿勢に敬意を払いたくなりますね。

廃藩置県の仕上げ、沖縄県が生まれた年に誕生したすし店で、ランチはいかがでしょうか?

■吉野鮨本店
住所:東京都中央区日本橋3-8-11
TEL:03- 3274-3001
営業時間:11:00~14:00、16:30~21:30(土曜日は14時まで)
定休日:日・祝
地図:Yahoo! 地図情報

※上記すべて取材時(2012年4月)の情報・価格です。
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※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。
※メニューや料金などのデータは、取材時または記事公開時点での内容です。

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