マーケティングを軽視する賃貸経営は自滅する
バス・トイレ一体は不人気です
空室対策のポイントは「入居者ニーズを捉える」ことです。地域により単身者向けのニーズ、ファミリー向けのニーズがそれぞれ高いところがあります。新たに賃貸経営を始める場合はどちらをターゲットとするかで、部屋の間取りを変えなくてはいけません。
また同じ単身者であっても社会人と学生では賃料帯も違いますし、高級志向の強い地域と下町では家賃設定を変える必要があります。築10年以上経過している建物を持つオーナーさんの場合も、地域の特性を踏まえてさまざまな入居者ニーズに応えていく努力が必要です。
設備についてのニーズにも応えていく必要があります。予算の関係もあり、すべてのニーズに応えることは不可能なので、優先順位を考える必要があります。入居者にとって絶対に必要なもの、賃料次第ではあきらめるもの、という2つの段階に分けて考えてみましょう。
「絶対に必要」という強いニーズがある設備としては、たとえばエアコンがあります。アンケート結果を見ても、「絶対必要」と「家賃次第ではあきらめる」を合わせて80%以上の要望があり、今やエアコンは必須といっていいでしょう。
部屋の間取りの面では、「バス・トイレ別」の要望が最近は非常に強くなっており、やはり80%以上が「ユニットバスでバスとトイレが一体の物件は避けたい」と考えています。「絶対に別々がいい」という割合だけで70%を越しているのです。
設備では、他にキッチンのガスコンロ、オートロック、安全関係ではディンプル錠やダブルロックなどがあります。若い人であれば、ブロードバンド対応かどうかも重視するでしょう。キッチンが電気コンロという物件は賃貸ではいまだ多く見かけますが、最近の入居希望者では「見たことがない」という人も多く、私どももガスコンロへの変更を提案することがしばしばあります。
こうしたニーズは、ターゲットとする入居者層や地域によっても異なります。エアコンにしても、東京では必需品でも、北海道では必ずしもそうではありません。地域の特性を考え、ターゲットとする入居者を考えながら、家賃に応じた予算の範囲で設備を充実していく必要があるわけです。
入居者ニーズはターゲット層ごとに異なる
賃貸物件に対する入居者のニーズは多種多様です。男性と女性では違い、独身者とファミリーでも異なります。空室対策ではオーナーさんがそうしたニーズをどれほど真摯に受け止めて対応するかが問われます。入居者が部屋を決定する要因は、どこにあるのでしょうか。アンケートを見ると、現在の物件に決めた要因として圧倒的に多いのが、「予算内でもっとも希望条件に合っていた」という答えです。つまり「まずは家賃」ということです。不動産会社の窓口で入居希望者が最初に聞かれるのも、「予算はいくらですか」という質問です。ほとんどの入居希望者は、まずは家賃の上限を決め、その範囲内で部屋を探します。
そして、予算の中でそれぞれ自分にとって譲れない条件を考えるのです。それは駅からの距離であったり、築年数であったり、ペットを飼っている人であれば、「ペット可」が絶対条件であったりします。ある物件の家賃が入居希望者のターゲットに入ったとして、最終的に選んでもらえるかどうかは、その他のニーズをどこまでカバーできているかにかかってきます。
同じような賃料帯の物件の中で他と比べられ、「こっちがいい」と選んでもらう必要があるのです。そこでターゲットとする入居希望者に対して、物件のどこを売りにするかを考え、優先するニーズを決めなくてはなりません。若い女性がターゲットであれば、建物のデザインや内装のおしゃれさ、セキュリティ、植栽などがポイントになるでしょうし、若い男性ならブロードバンド対応は必須です。ファミリーであれば「子育て」がキーワードで、収納スペースが大きいことやお風呂の追い炊き機能などが必要となってきます。