この上昇を利益確定のタイミングと考えることもできるが……
日経平均が1万円をタッチして、にわかに株式市場をとりまく人たちの目の色が変わってきました。今まで株に見向きもしなかった人たちが株式市場に戻ってきて投資をしています。私はいつも不思議に思うことがあります。なぜこのタイミングで買おうとする人が急に増えるのか。個別銘柄はまったく別問題ですが、日経平均に着目するなら、個人的には売り抜けてもいいタイミングだと捉えています。「早い」と思われるかもしれませんが、ちょっと早いくらいでちょうどよい、というのが私の今までの経験です。
実際、8000円代前半でしこたま買い込んだ私の投資仲間は、9800円前後で売却したそうです。
もちろん、「トレンドに乗る」という考え方もアリで、上昇圧力が強いときは、一時的な調整局面の押し目を狙って買い増す戦略も有効です。たとえば日経平均で言うなら、9000円から1万円のタイミングではないでしょうか。ただしこれは、じっくり待てる中長期投資ではなく、比較的短期売買ができる人向けで暴落のリスクにさらされる値段になって、多くの人は株式マーケットに参入します。
そんな人はたいてい、次の暴落相場でコテンパンにやられます。
……こうなってしまうひとつの理由は、マスコミや投資アドバイザーの発言にもあります。
彼らは、暴落して割安になったときに「買え」とは言わず、高くなって利益が乗ってきたときに「売れ」とも言いません。むしろ逆で、暴落相場では「7000円台に下がるかも」「しばらく様子見をしよう」と言い、相場が過熱気味になったときに「1万2千円に乗せるかも」「上昇トレンドに転換か?」と言います。
世の中が悲観的なときには「買う」、楽観的なときには「売る」
ではどうすればいいのか?単純なことで、世の中が悲観的な時に仕込み、世の中が楽観的な時に売るのです。これはもう、技術というよりも「考え方」の問題です。
「投資はメンタルが重要」と言われるゆえんでもありますが、実は勝敗を決するのはメンタルです。なぜかというと、「安いときに買い、高いときに売れ」という投資の格言は、誰もが一度は聞いたことがあると思います。「この法則を守ることが大事です」と言われれば、「そんなの知っているよ」と答えるでしょう。そう、儲けのコツは、実はみな知っているわけです。
健全な投資技術は健全なメンタルに宿る
実際には、わかっていても、そのように行動できないだけなのです。私も恐ろしくなってエントリーできない場面は多々あります。つまりチャートやらテクニカル分析といったノウハウをありがたがっているうちは、勝てる投資家にはなれないということです。まずは少額でもよいので、暴落の嵐の渦中に飛び込み、「まだ上がるかも」という欲望を抑えて売り抜ける(一部ポジションは持ったまま引っ張ってもOK)、という経験を積みたいものです。技術はアプリケーションソフト、メンタルはOSのようなもの。健全な投資技術は健全なメンタルの上に宿るのです。
もちろん、これが絶対だというわけではなく、ひとつの考え方に過ぎませんが、これは私が、何度ものパニック相場の嵐の中、はらはらどきどきして、時にはちびりそうになりながら学んだ、ひとつの教訓です。