古代からワカメになじんでいた日本人
ワカメは、縄文時代の遺跡から土器とともに発掘され、また『万葉集』には百首近くが残されているように、古くから身近な海藻であり、春を告げる食べ物の一つでもあります。ワカメを食用に供する習慣は、日本と朝鮮半島しかなく、韓国では、国民一人あたりの年間ワカメ平均消費量は、日本の三倍と言われているそうです。あまり知られていないと思いますが、日本からの商船などについてワカメの胞子が運ばれ、ニュージーランドやオーストラリア、ヨーロッパ諸国の沿岸に運ばれ、増殖しています。在来生物を侵す外来の害藻として「外来侵入種ワースト100」の一つとなっています。栄養成分が注目され、フランス等では小規模ですが養殖もされているそうです。
ワカメは、「和海藻(ニギメ)」という名前で、「ニギメ」の幼いものをワカメと呼ぶのですが、食用にしているのはほとんどこの幼い部分なのでワカメと呼ばれるようになったといいます。最近では、茎ワカメ、メカブなども市販されるようになっています。
ワカメは、荒波の海岸でとれるものが歯ごたえがあり良質とされています。特に、鳴門ワカメは有名ブランドで、独特の灰をまぶして乾燥させる「灰干し」が特徴です。この加工により、風味を長期間活かし、灰のアルカリ分が葉緑素の分解を抑え、さらに水で洗えば生ワカメの新緑色・香り・歯ごたえが戻りますので、優れた加工法と言えるでしょう。最近では、灰干しに適した灰の確保が難しくなり、代わりに活性炭の粉末を使った加工がされるようになっているそうです。(参考/せとうちネット・環境省)
海藻と海草はどう違う?
ちなみに、「海藻」と「海草」の言葉の使い分けはご存知ですか?どちらも「かいそう」と読みますが、「海藻」はコンブ・ワカメ・ノリなどのような花をつけない植物で、「海草」は花をつけて種子をつくる植物に分かれます。
今しか楽しめない生ワカメの魅力
ワカメは、そのままの生ワカメと、加工品の塩漬けワカメ、乾燥ワカメに分けられます。生ワカメは早春が旬で、加工品のように長く保存はできませんが、歯ごたえや磯の香り、鮮やかな色等新鮮さが魅力です。生ワカメは、一度サッと湯通しして冷水にとります。塩漬けや乾燥ワカメ、また茹でた生ワカメは緑色ですが、実は海の中や生きた状態ではフコキサンチンの褐色。生ワカメを湯通しすると、フコキサンチンが変性して色が消え、隠れていたクロロフィルのきれいな緑色になります。
ワカメは、汁物の他にも酢の物、炒め物、サラダ、地域によっては天ぷら等幅広く料理され、韓国ではお誕生日には「ワカメスープ」がつきものだそうです。私の好きな生ワカメの食べ方は、生ワカメをしゃぶしゃぶでいただくこと。色が変わる楽しさや歯ごたえがおいしく生ワカメならではの楽しみです。
加熱調理に使う時は、火をいれすぎないことがポイントです。色が残るくらいで、食べる直前に加えましょう。水につけすぎたり、火を入れ過ぎると歯ごたえもなくなります。
参考/
・健康食品の安全性・有効性情報(独立行政法人 国立健康・栄養研究所)
・五訂 日本食品標準成分表
・中央水産研究所
・独立行政法人水産総合研究センター利用化学部応用微生物研究室
・ワカメ[せとうちネット](環境省)
・日本海藻協会
・IUCN(国際自然保護連合)日本委員会
・昆布の栄養機能研究会
・味覚の歳時記(講談社)
・江戸時代食生活事典(雄山閣)
その他