高利回りの商品を日本で買うとナゼ儲からないのか?
世界を見渡すと、たとえばオフショア(税金が優遇されている地域)で販売されるファンド(ヘッジファンド)などは、年利回り20%や30%といった商品がゴロゴロ見られます。そしてオフショアで販売されているファンドを日本の金融機関が販売しているケースが散見されます。しかし、オフショアの証券会社から直接買えば年利30%が達成できるのに、日本で買うとなぜ数%にしかならないのでしょうか?それは、日本の文化と規制の問題があります。まず、海外の商品の目論見書、説明用のパンフレットや契約書を日本語に翻訳しなければなりません。ここに人件費の高い日本人のマンパワーが使われ、経費がかかります。次に金融庁への許認可や届出など、商品として認可されるまでのコスト、その後も報告のコストがかかります。そして、販売する営業担当、窓口、提携FPなどを教育しなければなりませんし、成約時の手数料を払う必要もあります。
このように、日本市場で販売するためには膨大なコストがかかり、金融機関や周辺にいる労働者の人件費に消え、投資家の手元には利益が残らない構造になっているのです。英語ができる人は、世界の投信と比較して商品選びをしますから、日本市場にある金融商品の利回りの低さに愕然とします。しかし彼らは直接海外市場に投資できるため、日本の金融機関に払うマージン分も、自分の利益にできます。ここでも大きく差がつきます。
日本人は損失を受け入れるストレス耐性が弱いのが問題
ただし、この状況は何も、日本の行政や金融機関だけのせいではなく、投資家、つまり日本国民のせいでもあるのです。日本人は完璧を求めますし、損失を受け入れるストレス耐性が弱いため、すぐに金融機関に文句を言います。さらに、ほとんどの日本人投資家(銀行や郵便局で金融商品を買うような人)には自己責任という考えがありません。売り手がまじめにやっていても、損失を出したり破綻したりすれば、すぐ集団訴訟となって大きな問題となります。そうなれば警察や行政当局も動かざるを得ず、しかも最初から性悪説で捜査するため、証拠集めも揚げ足取りになり、結局は「顧客をダマした」という評価になります。こんなハイリスクな市場はほかの国では考えられないことです。そして、そうしたクレームや訴訟のリスクから会社を守るために、膨大な資料を準備し、サポート要員を抱えます。結果として高コストとなり、それが顧客の利益を奪うのです。