年金制度改革の行方は?
社会保障と税の一体改革で家計への影響はどのくらい?
■新しい年金制度の創設
「所得比例年金」と「最低保障年金」の組み合わせからなる1つの公的年金制度に全ての人が加入する新しい年金制度の創設について言及されています。
●所得比例年金(社会保険方式)
・職種を問わず、すべての人が同じ制度に加入し、所得が同じなら同じ保険料、同じ給付
・保険料は、15%程度
・納付した保険料を記録上積み上げて、仮想の利回りを付し、その合計額を年金支給開始時の平均余命などで割って、毎年の年金額を算出する
現在の年金制度は、国民年金をベースとしながらも、自営業者、サラリーマン、公務員がそれぞれ個別の年金に加入する仕組みになっていて、負担や給付について公平性が保たれていないという議論があります。そこで、すべての人の所得をベースに負担を決め、負担に見合った給付を行うという趣旨の制度になっています。
●最低保障年金(税財源)
・最低保障年金の満額は7万円
・生涯平均年収ベース(=保険料納付額)で一定の収入レベルまで全額を給付し、それを超えた点より徐々に減額を行い、ある収入レベルで給付額はゼロ
・すべての受給者が、所得比例年金と最低保障年金の合算で、概ね7万円以上の年金を受給できる制度
現在の国民年金の満額は約80万円なので、これと同等の年金額が、すべての受給者に最低保障年金として支給されるというものです。
新しい年金制度の創設については、国民的な合意に向けた議論や環境整備を進めて、平成25年の国会に法案を提出する予定になっていますので、今後の議論の動向に注目しましょう。
■現行制度の改善、目玉は短時間労働者に対する適用範囲の拡大
現行年金制度の中で、最も注目度が高いのは、短時間労働者に対する厚生年金の適用拡大についてです。現行の厚生年金制度では、パート・アルバイトの労働時間について、正社員のおおむね4分の3以上であれば、厚生年金の加入が義務付けられています。この4分の3以上という要件を引き下げ、パート・アルバイトなどの短時間労働者の年金加入の適用範囲を広げよう、という動きがあります。
短時間労働者に対する適用範囲の拡大は、厚生年金だけではなく、健康保険についても同時に検討されています。平成24年2月現在、厚生年金の保険料率は16.412%(本人負担分8.206%)で、健康保険料率9.48%(本人負担部分4.74%、東京都の40歳未満の人の場合)なので、適用範囲が拡大された場合、該当者は、収入のおよそ13%程度の社会保険料を納めなければなりません。
税扶養・社会保険扶養の範囲内、ギリギリで働いている人も多いので、家計に与える影響は大きそうです。
●国民年金第3号被保険者、健康保険の被扶養者の年収要件も見直し?
また、国民年金の第3号被保険者や健康保険の被扶養者となる年収要件(60歳未満の場合、年収130万円)も、社会保険の適用範囲の拡大に合わせて、引き下げることが検討されるでしょう。
俗に言われている社会保険の適用を受けない「年収130万円の壁」の概念も、変わることになりそうな様相ですので、制度改革の動向に注目しなければなりません。制度変更が決まってから対応を考えるのではなく、もう少し早めに、世帯で収入をどのように得ていくか、ライフプランも含めて、夫婦で話し合うことができれば良いですね。
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■まだまだある、年金制度改革の論点
新しい年金制度の創設や短時間労働者への適用範囲の拡大の他にも、注目すべき論点はあります。
・高所得者の年金給付の見直し
・第3号被保険者制度の見直し
・標準報酬上限の見直し
・支給開始年齢引上げの検討
全般的に見ると、保険料負担の増加と給付の抑制という方向に、間違いなく向かっているといえそうです。特に支給開始年齢の引上げの議論は、老後の生活設計に大きな影響を及ぼす改正となりますから、現役世代から老後の生活設計を見据えた、ライフプランとマネープランを作ることが、より一層重要となるでしょう。
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