絵本で思う 「働くっていいなあ」
どんな人でも、仕事に追われ、疲れがたまり、気分まで落ち込んでしまうことがあります。あるいは、仕事に迷いを感じたり、憤まんやるかたない出来事に、すっかりやる気がなくなってしまったり…… そんな時には、声高な激励よりも、絵本が役に立つかもしれません。ご紹介する2冊はどちらも、誠実に仕事に取り組む人々の姿が描かれた作品ですが、共通点はそれだけではありません。最後のページにたどり着いた時に広がる静かな感動が、「働くっていいなあ……」という気持ちを思い出させてくれます。
■ペンキや
ペンキ屋に生まれ、ペンキ屋として生きて、その一生を終えたあるペンキ職人の生涯を描いたファンタジックな物語です。霧の中に現れた不思議な女性に導かれて、彼が追い求めたのは「ユトリロの白」と呼ばれる色。それは喜びや悲しみ、ウキウキした気持ちや寂しい気持ち、そして怒りやあきらめなど、あらゆる思いを内包した色でした。はたして彼は、「ユトリロの白」を作り出し、父親と同じ「不世出のペンキや」となることができるのでしょうか。亡き父への憧れやペンキ屋という仕事への誇りが静かに語られ心を打つ物語です。
【書籍DATA】
梨木香歩:作 出久根育:絵
価格:1365円
出版社:理論社
購入はこちらから
■満月をまって
尊敬する父親とその仕事に対して浴びせられる侮蔑の言葉……それは9歳の少年にとって耐えがたいものでした。心ない言葉を耳にして、急に色あせて見える父親の仕事。それを乗り越え、仕事への揺るぎない自信を取り戻していく少年の心の成長と、高い技術と情熱をもって仕事に向かう人々の姿を描いた感動的な作品です。主人公の心身の変化や季節の移り変わりを美しく描いたクーニーの絵が、読者の疲れた心を優しく癒してくれそうです。
【書籍DATA】
メアリー・リン・レイ:文 バーバラ・クーニー:絵 掛川恭子:訳
価格:1470円
出版社:あすなろ書房
購入はこちらから
>> 次は、知的なエンターテイメントを楽しみたい時に……