多種多彩なワットはエチオピアのおふくろの味
さて、そんな「エチオピアンカフェ・ルーシー」の料理をいくつかご紹介しよう。とその前に、エチオピア料理の豆知識を少し。エチオピア料理は、“ワット”と呼ばれる煮込み料理が多い。牛肉や羊肉などの肉類に加え、豆や野菜などさまざまな材料が使われる。これらを何種類かパンにのせ、インド料理のように手で混ぜながら口に入れる。これが一般的な食事のようだ。
鶏肉の激辛煮込み「ドロ・ワット」(在日エチオピア人のお宅にて)
また、ワットにはさまざまなスパイスを加えるのも特徴だ。もっともよく使われるのが、ピリッと辛いミックススパイス「バルバレ」である。家庭や店によってスパイスの配合は異なるようだが、激辛というところは共通点。ほぼ毎食、このバルバレをたっぷりと使った辛~いワットが必ず1品は加わり、あとは辛さがマイルドなワットと辛くないワットを組み合わせ、バランスよく食べるという。辛さが控えめのワットにも、ターメリックやカルダモン、クローブなどのスパイスが幅広く使われることも注目すべき点だろう。
主食は酸味があるパン「インジェラ」が代表格
エチオピアの主食といえば、「インジェラ」なしでは語れないだろう。テフと呼ばれる小粒の穀物を粉にし、水を加えて発酵させ、クレープ状に焼き上げたものなのだが、これがまあ、なんともクセになる味なのだ。酸味があって、しっとりとしていて、決してほかでは味わえない。ワタシが初めてインジェラを口にしたのはかれこれ15年以上も前になるのだが、現に、そのときから今日にかけて、時々無性に食べたくなるパンベスト3に必ず入るほど、インパクトのあるパンなのだ。
インジェラにワットをのせて食べるのがエチオピア流。小ぶりなサイズは、日本人に食べやすいようアレンジしたという
「エチオピアンカフェ・ルーシー」では、インジェラは常時メニューにはなく、事前予約が必要だ。しかも、最低4日前までに。これは、インジェラの生地を発酵させるのに、最低4日はかかるからである。日本ではまだまだインジェラの存在は知られていなく、味わいも個性的であるため、常に作っておいても、無駄になってしまうことがあることから、このような形をとっているのだろう。大きさもそのあたりを考慮し、小さめサイズで提供する。
エチオピア産のゴマ入りパン「アンバシャ」。蒸し焼きにしているから、驚くほどしっとり!