ある一定の敷地に建築することのできる建物の大きさは、建ぺい率と容積率だけで決められるわけではありません。道路斜線制限、隣地斜線制限、北側斜線制限のほか、日影規制や高度地区による制限などもあり、これらが複雑に組み合わされて建物の形状や高さを抑えています。
ひとつの面が階段状になったようなマンションは、都心部や郊外の幹線通り沿いで比較的よく見かける光景でしょう。
斜線制限に基づいたデザインが、逆に建物の個性や特徴になっていたり、広めのルーフバルコニーを多く設置できたりといった面もあり、必ずしも斜線制限がデメリットだとはいえません。周辺建物の日照を確保するためにも、必要な制限でしょう。しかし、指定された容積率を有効に活用できないことにより、斜線制限によって土地の評価(主に売買価格)が下がる場合もあります。
また、下層階は斜線による制限を受けないものの、最上階が斜めにカットされているようなマンションも多いでしょう。
建物の高い部分ほど斜線制限を受けることが多いため、最上階や屋上が複雑な形状になっているマンションも見られます。
しかし、これらの斜線制限はマンションやビルの高層建物に特有の問題というわけではありません。一戸建て住宅でも斜線制限の影響を受ける場合があります。
斜線制限の影響が、屋根の形状を工夫するだけで済めば大きな問題にはならないものの、場合によっては室内の天井に勾配が生じることもあるでしょう。
注文住宅の場合には、設計者とよく話し合ったうえで斜線制限を受ける部分の処理を考えることもできますが、建売住宅の場合には斜線によって制限された空間に、目一杯の建物を造ろうとしていることも少なくありません。
建売住宅の販売図面をみたときの印象とは違い、上階の居室の天井に勾配があって圧迫感の強いケース、あるいは収納部分を開けると空間が三角形のように削られていて思うように荷物を置けないケースなどもあります。通常の2階建て住宅のときは斜線制限の影響を受けることが比較的少ないでしょうが、3階建て住宅のときや、北側隣地などとの境界線と建物の間隔が狭いときにはとくに注意が必要です。
さらに、一戸建ての屋根の形状が複雑になるときには、防水上の問題や強度の問題が生じるケースもあるため、しっかりと施工されているかどうかのチェックも重要になってきます。
通常の一戸建て住宅では、隣地斜線制限と日影規制が対象外となることも多いものの、道路斜線制限、北側斜線制限および高度地区による制限(斜線型高さ制限)の対象となることは少なくありません。用途地域による違いもあり、実際に斜線制限がどのようにかかるのかは判断が難しいものです。不動産業者の担当者では、どう影響を受けるのかなかなか分からないのが実情でしょう。建築敷地としての土地を購入するときには、建築士などのアドバイスを受けることも検討するべきです。
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