土地活用のノウハウ/空室対策・賃貸管理・老朽化

老朽化物件の出口戦略(1) リノベーションする(2ページ目)

賃貸住宅も築25年を超えた頃から傷みが激しくなってきます。当然、賃貸住宅にも寿命がありますが、建物の工法・構造により耐用年数が異なり、設備・外壁にも寿命があります。メンテナンス・修繕を行っても建物が老朽化してきた場合、根本的な対策を考える必要がありますが、リノベーション(再生)、建て替え、買い換え、賃貸経営からの撤退という4つの選択肢が考えられます。ここでは、リノベーションについてご説明します。

谷崎 憲一

執筆者:谷崎 憲一

土地活用ガイド

老朽化物件の4つの出口戦略

十分なメンテナンスと定期修繕を行ってもなお建物が老朽化してきたら、いよいよ最終的な選択を迫られることになります。老朽化した賃貸物件に対しては、大きく分けて4つの選択肢があります。

  1. リノベーション(再生)
  2. 建て替え
  3. 買い換え
  4. 賃貸経営からの撤退

これらは、それぞれに利点と問題点があります。
今回はこの中から、リノベーション(再生)について、ご説明します。

リノベーション(再生) 

リノベーション

リノベーションで財産を再生!

賃貸用の建物が寿命を迎えたときの第1の選択肢がリノベーション(再生)です。大規模な改修によって新たな賃貸物件として蘇らせることを言い、主に鉄筋コンクリート造の建物が対象となり、相続税の節税効果も見込めます。

リノベーションは、一般的なリフォームとは少し違います。リフォームは、基本的には機能や外観を以前の通りに戻すことが目的です。築30年の建物なら、30年前の姿を取り戻させるための改修工事です。リノベーションは過去の姿に戻すのではなく、もっと未来志向の改修です。新しいデザイン、新しい付加価値をつけ加え、サプライズを生み出し、入居者の心を捉えることを目的としています。

建て替えるか、リノベーションを行うかの選択では、築25年が一つの分岐点といえます。木造アパートの築年数が25年を超えてしまった場合、リノベーションで延命させるという選択肢は考えなくていいでしょう。「そろそろ取り壊しの時期だな」と考えるべきです。

一方、鉄筋コンクリート造の場合、築30年前後で大型のリノベーションを行い、賃貸住宅としての寿命を延ばすケースが多くあります。リノベーションの費用はケースバイケースで、建物の構造によっても違いますが、一般に築30年でのリノベーションとなると、給排水設備、外壁などの全面取替えを行い、防水処理をし、さらに新しくデザインや設備面で建物の付加価値を増すような再生工事を考えることになります。そうなると中型のマンションでも3000~4000万円はかかります。

老朽化物件のリノベーションを行うことは、相続税の節税にもつながります。相続発生前に実施することで、工事に要した費用分だけ相続財産が減ることになるからです。

大規模なリノベーションを行ったとしても、それによって固定資産税評価額が上がるということは、通常はありません。築年数が古く、固定資産税評価額が500万円しかないマンションのリノベーションに数千万円をかけたとしても、評価額は500万円のままです。

大型リノベーションにより現実の不動産の資産価値が上がったとしても、一般的には税法上の評価額には反映されないのです。リノベーションに3000万円使えば、その分ダイレクトに相続税評価額が減り、税額も低くなります。

逆に自宅や賃貸住宅を相続した人が、相続発生後に自分でリノベーションするとなると、相続税を払った残りからリノベーション費用を捻出することになります。

リノベーション費用を相続発生の前に払うか後に払うかで、手元に残る金額にとても大きな差が出る場合がありますので注意が必要です。

既に触れたように賃貸住宅のリフォームやリノベーションの代金は減価償却の対象として、何年かに分けて経費で落とすことができます。それを考えるとリノベーションに限らず、いずれ必要になることが分かっている修繕やリフォームであれば、被相続人が健在のうちに済ませておくほうがお得だといえます。
  • 前のページへ
  • 1
  • 2
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

あわせて読みたい

あなたにオススメ

    表示について

    カテゴリー一覧

    All Aboutサービス・メディア

    All About公式SNS
    日々の生活や仕事を楽しむための情報を毎日お届けします。
    公式SNS一覧
    © All About, Inc. All rights reserved. 掲載の記事・写真・イラストなど、すべてのコンテンツの無断複写・転載・公衆送信等を禁じます