絵本/おすすめロングセラー絵本

昔話なのになぜ人気? 『おおきなかぶ』の魅力(2ページ目)

50年以上のロングセラーを誇る『おおきなかぶ』はロシアの昔話です。人気低迷がちな昔話の中で、ロシアの昔話であるこの作品はなぜ人気が高いのでしょうか? お馴染みの『おおきなかぶ』が子どもたちに愛され続けている理由を考えます。

執筆者:大橋 悦子

積み木遊びのような「ドキドキ感」が楽しめるストーリー

次に、登場人物が、かぶを抜く過程をみてみましょう。引き手が登場するたびに、「うんとこしょ どっこいしょ」という掛け声が響き、子どもたちは自然とお話に引き込まれていきますね。

そして、引き手の列は、新たな登場人物が加わるたびに長く伸びていきます。その縦長の鎖のようなつながりを後ろから前へと逆にたどりながら、お話が進み、かぶが抜けると同時に、鎖がぷっつりと切れてお話の終わりをむかえます。

ロシアのかぶ

ロシアの昔話には、大きなかぶがたびたび登場します

ロシア民話研究家の斉藤君子さんは、その面白さを積み木遊びの面白さに例えました。(※1) 『おおきなかぶ』には、今にも倒れそうなほど高く積まれた積み木に、さらに積み木を重ねる時のあの緊張感があるというのです。そして、今か今かとかぶが抜けるのを待つ、そのドキドキするような緊張感を楽しんだ後は、かぶが抜けたのを機に、(まるで倒れる積み木の様に)おじいさんからねずみへの連鎖が一気にバラバラになって物語が終わります。緊張の後に突然訪れる気持ちのよい弛緩が、子どもたちの「もう一回読んで!」につながっているのは間違いありません。

崩れなければ終わらない積み木遊びのような、「ドキドキ感」と終わりが始まりにつながる「エンドレスの楽しみ」。その両方を持った作品であることが、『おおきなかぶ』が愛され続ける最大の理由だと思います。


【書籍DATA】
ロシア民話 A.トルストイ:再話 内田莉莎子:訳 佐藤忠良:画
価格:864円
発売日:1966/6/20 『こどものとも』での初出は1962年5月号
出版社:福音館書店
推奨年齢:3歳くらいから
購入はこちらから


※1 参考文献
「大きなかぶ」はなぜ抜けた?』 小長谷有紀:編 講談社
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