国家破綻のシナリオ
膨張を続ける国債の引き受け手がいなくなったとき、あるいはメガバンクのひとつが国債の売却を始めたら、連鎖的に国債暴落が始まるかもしれません。金利は急上昇し、株価も大暴落。
その状況で、投機マネーがほうっておくはずはなく、格好の日本売りのターゲットです。売りが売りを呼び、暴落は加速します。
国債を大量に抱える銀行は、国債暴落によってバランスシートが大きく毀損し、新規融資ができず、お金が回らなくなります。預金準備金も不足し、預金の引き出し制限がかかり、さらにパニックになる。
同時に、価値が目減りするであろう日本円を保有する人は減少するため、円が売られ、急激な円安になります。
日本は多くを輸入で賄っていますから、円安になれば、生活必需品も含めてほとんどの製品の値段が上がります。
今80円で仕入れている燃料や食糧、原材料が、160円になれば2倍の円を払わなければならなくなる。給料が上がるわけではありませんから、1000万円持っていても、500万円の価値に目減りしてしまうということです。
国債の引き受け手がいなくなると国家運営ができませんから、日銀法を改正してでも日銀が国債を引き受け、どんどんお札を刷ることになります。
すると、インフレになります。インフレが過度に進めばお札はゴミほどの価値になり、新円切り替えによりデノミをするかもしれません。
それは悪性インフレを誘発します。なぜなら、価値が切り下げられる通貨を受け取っても意味がないので、売り手は商品の値段を上げるからです。
しかし日本は世界第3位の経済大国ですから、世界経済も金融も、リーマンショックのときとは比べ物にならないくらいの恐慌に陥るでしょう。
IMF(国際通貨基金)が日本に緊急融資を行い、日本はIMFの管理下に置かれる。公務員の人員削減や給与カットも行われ、財閥や特殊法人の解体、公共事業の激減、増税や給付の削減など厳しい緊縮財政が敷かれる。
多くの企業は倒産、失業率は20%を超え、金利上昇とのダブルパンチで住宅ローン破綻者が続出。
失業者が街に溢れ、治安は悪化・・・。
しかし、超円安によって、製造業を始めとした輸出産業が息を吹き返し始めます。
さらに、株安・円安・債券安のトリプル安となれば、外国人投資家から見れば絶好のバーゲンセールです。
アメリカ、ロシア、中東、中国から、機関投資家だけではなく個人富裕層も含めて、日本を買いまくるようになる。
少しずつお金が動き始め、日本経済が回復していく。
破壊と創造の名の通り、社会はいったん崩壊し、多くの国民が犠牲となり、そこから新生日本が始まる……。
起こるか起こらないかではなく、備えておくことが重要
これほどの事態が起こる可能性は高くないかもしれませんが、ゼロだとは言い切れません。実際、1946年、今からわずか65年前の日本で起こったことなのですから。日本は敗戦による賠償金支払いと、戦費調達のために発行した国債の償還ができず、日銀による国債引受をさせました。
結果は誰もが予想したとおり、悪性のインフレが起こり、デフォルトに追い込まれました。政府は預金封鎖(引き出し制限)やデノミを行った結果、国民は文字通り路頭に迷い、生活は困窮を極めました。
ちなみにIMFのシナリオは、お隣の韓国で、1997年に実際に起こったことです。
こうした歴史を知らず、赤字国債や復興国債を日銀に引き受けさせろと主張する政治家は、いったい何を学んできたのだろうと、よけいに不安になります。
彼らは世界の金融市場で日本がどう見られているかを知らないのでしょう。大臣以外で、いったい何人の政治家が、海外の要人や民間企業の要職者と情報交換をしているでしょうか。
もしかしたら、外の動きをほとんど知らないのかもしれません。
さらに不安なのが、今の状況を見ていると、おそらく政府には赤字国債の返済意思はないだろうなと感じる点です。通常、借金をしている人が新たに借金をするとき、生活を切り詰め、できるだけ借金を増やさないようにするはずです。
しかし日本政府は、「足りない分は国債発行で賄う」体質が当たり前になっています。
事業仕分で凍結されたはずの公務員宿舎の建設がこっそり再開されたように、切り詰める発想がありません。
自分の利権が確保できればそれでいいのでしょう。
そういえば、個人が消費者金融で借りられる上限が、年収の3分の1までに規制されました。しかし、その規制を作った国自体が、収入以上の借金を毎年しているというのは、もはやギャグとしか言いようがありません。