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東京大学、秋入学検討へ どうなる学生生活?(2ページ目)

東大が入学時期を全面的に現在の4月から9月に移行していく方針を発表しました。それに対して他の大学や一部の企業も同じ方針を発表しましたが、これは日本社会にとってどのような意味を持つのでしょうか?

執筆者:All About 編集部


海外ではすべてが9月スタート

とはいえ、日本で無理に9月入学を導入しようとしても、いろいろ問題が生じてくるのも事実。そもそも海外で大学が9月入学になっている国は、大学だけではなく小学校から高校まで全てが9月入学です。つまり、高校まで9月入学で来て高校を6月に卒業して、その年の9月に大学に入るわけです。

しかし、日本で高校以下が秋入学に移行するという話は全くありません。つまり、高校以下が4月入学で、大学が9月と、国内でも入学時期にズレが生じることになります。すべての大学が9月入学に移行するわけではありません。

同じ大学で4月入学と9月入学を併用するならともかく、9月に全面移行となると、大学入学を考える若者の人生設計を根底から変えてしまうことになります。

高校卒業後半年はどうする?

現実問題として、9月入学になったら、高校を3月に卒業してから半年はどうするのでしょうか?

試はどうなる
東大の発表では、大学入試はこれまでと同様、1~2月に実施するとしています。つまり入試については、高校3年生はこれまでと同じように、他の大学と同じ時期に準備をしておけばいいわけです。

合格したらその後9月までどうする?
これが最大の問題です。入試が今まで通りで合格発表が2~3月だとすると、合格が決まって高校を卒業してから、入学まで半年ほどやることがなくなってしまいます。東大の発表では、「留学やボランティアなどの活動をしてもらい。修了した者は評価する」としていました。留学やボランティアなどをしてもらうとのことですが、毎年数千人もいる学生全てに対して、そういった機会を提供できるでしょうか?

就職活動はどうする?

さらに問題となるのが、大学4年次に行う就職活動です。ちなみに、「新卒一括採用」という、大学4年で就職活動を行い、卒業した新卒学生を大量に採用する習慣は、日本独自のものです。海外の9月入学の国で、それに合わせて大学4年生が就職活動をするということはありません。企業が9月から新卒を一斉に入社させるということもありません。海外では採用は企業ごとにバラバラに行い、学生は卒業後に各自就職活動を行います。

9月入学になった場合、大学生の就職活動はどのようなスケジュールで進むでしょうか? ちょっとシミュレーションしてみました。前提として、現在の大学生の就職活動は以下のようなスケジュールで進んでいることを確認します。

3年12月活動開始→4年4~6月内定→4年3月卒業→4月入社

9月入学→9月入社の場合

大学の秋入学に合わせて新卒の入社時期を9月に移行した企業に入社するとなると、そのスケジュールは以下のようになるでしょう。ただし、これは9月入社の企業の採用活動が、これまでと同じ12月スタートで、4~6月内定というスケジュールで進むことを前提とします。

4年12月活動開始→4年4~6月内定→4年6月卒業→9月入社

この場合、大学の入学時期と企業の入社時期が同じ9月なので、比較的スムーズに行くと思われます。ただし問題になるのは、卒論でしょう。これまでの就職活動だと、大学4年生は順調に行けば春頃までに就職活動を終わらせ、秋以降に卒論を仕上げるというスケジュールの学生が大半でした。

それがこのケースだと、4年生の春頃に就職活動と卒論が重なってしまう可能性があります。そうなると学生にとっては非常に厳しい春になります。

9月入学→4月入社の場合

さて、これまでのように4月入社の企業に入りたい場合、いろいろと問題が出てきます。スケジュール的には以下のようになるでしょう。

4年12月活動開始→4年4~6月内定→4年6月卒業→翌年4月入社

4年生の春に内定をもらって卒業するまではいいのですが、その後翌年の4月入社まで、またやることがなくなります。しかし、今度は大学入学前と違って、大学が何らかのプログラムを用意しているとは限りません。

結局のところ、大学入学前の約半年と合わせて、約1年の期間、自動的に「浪人」生活、何もしない可能性がある時期が出てきてしまうわけです。その間、何をしていればいいのでしょうか?

この事態を防止するために、優秀な学生には「3年半」で卒業させるという方法もあります。つまり上のスケジュールで6月卒業のところを3ヶ月早め、3月卒業にする方法です。それだとその年にそのまま4月入社できます。

ただし、この方法は就職活動を3年の12月からしないといけません。新年度開始が9月ですので、3年になって直後というかなり早い時期に就職活動を始めることになります。

国際化のためには他にもやることがある

今回の秋入学移行の目的は「国際化のため」と発表されましたが、それだけでは国際化にはなりません。例えば、英語の授業を増やす、英語で教えられる教員を増やすなど、他にもいろいろやることがあります。真の国際化を目指すためには、まだまだ道のりは険しそうです。
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