間知石や大谷石!擁壁の種類と強度
「擁壁(ようへき)」がある住宅や土地を購入するときに気をつけたいポイントとして、これまで主に「亀裂やひび割れ」および「水抜き穴」を説明しましたが、それらと同時に「擁壁の種類や強度」にも注意が欠かせません。<目次>
擁壁が新たに造られるときは、鉄筋コンクリート造によるもの多い
擁壁の設置に関する技術的基準として、宅地造成等規制法施行令第6条では「鉄筋コンクリート造、無筋コンクリート造又は間知石練積み造その他の練積み造のものとすること」と定められています。宅地造成等規制法の対象外となる地域においても、この規定に沿った指導が行なわれている場合が多いでしょう(自治体の条例などにより異なる場合や、国土交通大臣の認可を受けた特殊な構法などを除く)。
最近では新築される住宅の擁壁が新たに造られるとき、鉄筋コンクリート造によるものが数多くなっています。
間知石、間知ブロックを用いた擁壁
その一方で、間知(けんち)石、間知ブロックを用いた擁壁も比較的多くみられます。1辺が30センチ前後の正方形、または短辺が30センチ前後の長方形の、大きさが揃った石またはブロックを積むもので、これを6個並べると約1間(約180センチ)になることから、「間知」と名付けられたようです。
間知石や間知ブロックによる擁壁の場合には、その裏側部分をコンクリートで固めたり割石などを詰めたりするほか、目地にはモルタルやコンクリートが充填されます。このような工法を練積み(ねりづみ)といいます。
間知石や間知ブロックの積み方はさまざまですが、水平方向に並べる布積(ぬのづみ)や斜めに積む矢羽積(やばねづみ)が一般的に多くみられます。
また、間知ブロックとは異なりますが、石を模した大きなコンクリートブロックを積んでいる例(模様が交互に連続していたりする)も高さのある擁壁などにみられます。
大谷石による擁壁
コンクリート造や間知石、間知ブロック(練積み)による擁壁は法に定められたものであり、亀裂や排水上の問題などがないかぎり、安全面での心配はありません。しかし、既存の住宅や土地では大谷石(おおやいし)による擁壁も数多く残っています。
大谷石は間知石や間知ブロックに比べ、一般的に強度面でやや劣るものとされていますが、その状態や排水に特段の問題がなければ、心配するほどのものではないようです。
ただし、この擁壁がある物件を購入するときには、ひび割れやふくらみなどがないか、排水施設に問題がないかなど、細心の注意を払うことは必要でしょう。
その他の石積み擁壁
その他の石積み擁壁でも、練積みによって個々の石が固められていれば、亀裂や排水などの問題がないかぎり大丈夫です。しかし、これが空積み(からづみ)の場合には十分に注意しなければなりません。空積みとは擁壁の裏側や目地がコンクリートなどで固められず、ただ単に石などを積んだままの状態であり、強度的に不安定なものとされています。
ただし、戦前の日本には熟練した石工が多く、昔の空積み擁壁はかなり強固だったという話も聞かれます。明治時代などに造られた空積み擁壁が、現在まで何ら問題なく残っている例もあるでしょう。でも、しっかりとチェックしなければならないことに変わりはありません。
空積みと同じく強度的に不安定とされるのがガンタ積擁壁で、解体した古いコンクリートの塊などを再利用して造られたものです。
コンクリートブロックで造られた擁壁
しかし、空積みやガンタ積よりもさらに危険性が高いとされるのは、コンクリートブロックで造られた擁壁です。そもそもコンクリートブロックは土留め用途としての適性がないものとされており、建物の再建築時などには擁壁の造り直しを指導されることもあるでしょう。コンクリートブロックの擁壁がある土地や住宅の購入を検討するときには、擁壁の造り直しを前提として資金計画を立てることも必要です。
(コンクリートブロック塀と混同しないように……)
増積擁壁
また、少し古い住宅地などでは増積(ましづみ)擁壁も比較的多くみられます。増積部分の高さが高いほど危険だとされ、とくにこれが2m以上の場合には擁壁全体の造り直しも検討しなければなりません。土地や住宅の購入を検討する際の注意点
これらの増積擁壁がある土地や住宅の購入を検討するときにも、やはり擁壁の造り直しを前提として資金計画を立てることが必要となってきます。ただし、外見上は増積にみえる部分が、実は単なる塀(裏側に土がない)の場合もあります。それが購入を検討する物件であれば、敷地の内側からよく観察するようにしましょう。
一方、コンクリート造や間知石、間知ブロックなど練積みによる擁壁は安全だといっても、そこに亀裂、ひび割れ、石のずれやふくらみなどがあれば危険性が生じるため、しっかりと確認をすることが欠かせません。
また、空積み擁壁の目地の隙間に後からコンクリートやモルタルを流し込んで補修をしている例もみられます。すぐに劣化や剥落が始まり、強度的にはあまり効果がないでしょうが、補修直後には練積みと見間違えることがあるかもしれないので注意が必要です。
なお、通常の擁壁とは異なりますが、敷地の中にある斜面全体をコンクリートで固めている例もみられます。
このような敷地の購入を検討するときには、どのような工事をしたのか、その安全性の評価も含めて詳細な説明を受けることが必要です。
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