無気力なヘラジカさんの変身物語

みなさんは、ヘラジカという動物をご存じでしょうか? その名の通り、大きなヘラ状の角が特徴のヘラジカは、泳ぎが得意で水と縁の深い動物だそうです。ところが、水に濡れるのが大嫌いというちょっと変わったヘラジカがいました。このヘラジカが変わっているのはそれだけではありません。好きなことよりも嫌いなことの方がはるかに多くて、いつもなぁ~んにもしない、とっても無気力なヘラジカだったのです。

そんなヘラジカに、自分に対する迷いが生まれたとき、何がどのように変わっていったのか……無気力なヘラジカのビフォア・アフターを描いた楽しい新作をご紹介します。

僕って、ほんとにこのままでいいのかなあ?

絵本『うまれかわったヘラジカさん』の表紙画像

無気力な人生に気付いて、自ら行動を起こしたヘラジカさんの愉快なお話


主人公のヘラジカは、そんなに変人だったのでしょうか? ええ、それはもうとても変わっていましたとも! 水だけでなく、強い風が嫌いだから凧揚げはいたしません。寒いのも嫌いだから、スキーなんてもってのほかです。どれも、やってみればとっても楽しいのにね。ところがある日、ヘラジカはふと思いました。「僕って、ほんとにこのままでいいのかなあ?」

けれど、いくら考えても、どうすれば良いのかはわかりませんでした。瞑想したり、インターネットで検索したり、占いやお祈りに頼ったりもしました。真剣に悩みながらも、彼には打開策をつかむことができませんでした……。

ところが、そんなヘラジカに転機が訪れます。「考えてもわからないなら、やってみよう!」と。さあ、お話はここから怒涛の展開を迎えますよ。たたみかけるようなスピード感たっぷりの展開に後れをとらないように、読者もまたヘラジカの変貌ぶりを心して楽しんでいきましょう。

何にもわからないなら、何でもやってみよう!

堂々たる風格のアメリカヘラジカ

主人公とはちょっと違う?堂々たる風格のアメリカヘラジカ

何でもやってみる決心をしたヘラジカの前には、ヨットが優しい風に帆を上げて、彼の乗船を待っています。海へと漕ぎ出したヘラジカさんは、嵐に遭遇し、小さな島へ打ち上げられ、自給自足の生活を余儀なくされる中、めげることなく日常を楽しみ、気の合う友だちまで見つけます。以前なら、悲惨としか思えない状況であっても、その中で「何でもやってみよう」と決心したヘラジカさんは、これまでとは違う素晴らしい毎日を経験していくことになりました。

自分が変われば、周りの世界も変わっていくことを目の当たりにしたヘラジカさんは、目の前の世界を全力で楽しむすべを体得したようです。このあたりのヘラジカの成長ぶりが見事で、まさに生まれ変わったという印象を与えますね。心の置き所を変えることで、急成長を遂げたヘラジカの物語は、人間関係や将来について悩みを持ち始める少し大きな子どもたちにも、ぜひ読んでほしいと思います。愉快なお話を楽しみながら、そんな子どもたちに力強いエールをおくることができる作品だからです。

人生のリセットという深いテーマを含んだ作品ですが、決して重苦しい作品ではありません。何もしない頃のヘラジカの傍らにSPF100の日焼け止めクリームが転がっていたり、悩めるヘラジカが見上げる夜空の向こうに、アダムスキー型UFOが飛来していたりと、作品のいたるところに作者の遊び心がちりばめられていて、思わずニヤリとさせられるユーモアたっぷりの作品です。もちろん小さなお子さんでも、動物たちのユーモラスな風貌に導かれ、大自然に育まれ成長する愉快な仲間たちときっと仲良くなれるはずです。


【書籍DATA】
ニコラス・オールドランド:作 落合恵子:訳
価格:1470円
発売日:2011/12/5
出版社:クレヨンハウス
推奨年齢:4・5歳くらいから大人まで
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