輸入車/注目の輸入車試乗レポート

2011年、心に残る12台(2ページ目)

“こたつでみかん”的に振り返ろうにも、重過ぎる1年が過ぎようとしています。クルマの世界はといえば日本車が意気消沈気味。魅力的なクルマも国産車より輸入車が上回っており、そろそろ国産車にも目立ってきて欲しい。そんな1年、印象に残った輸入車を通じて振り返ってみます。

西川 淳

執筆者:西川 淳

車ガイド

1月 初試乗マクラーレンにド肝を抜かれる

マクラーレンMP4-12C

マクラーレンのオリジナルミドシップスポーツカー、MP4-12C。最高出力600psの3.8リッターターボエンジンに7速デュアルクラッチトランスミッションを組み合わせる。日本には10月に発表され、価格は2790万円とされた


11年最初に取材したクルマはグンパートアポロで、スーパーカー評論家としては“良いスタート”を切ったけれども、一方で、今年は波乱の年になるかもな、と思ったものだった。案の定、というわけか……。デトロイトでメルセデスのやる気と本気に触れたときも、ドイツメーカーの攻勢を予感したものだった。

とはいえ、この月の“最高”は、何と言っても、マクラーレンMP4-12Cだった。ポルトガルで生産試作(プロトタイプ)に試乗したが、試乗を終えて即、“今年の一番”宣言をしてしまったほど。

いろいろあって、未だ日本への上陸を果たしていないけれど、12年の日本におけるスーパーカーシーンにおいてスターになることは間違いない。こんなに運転して楽しいと思えるミドシップ2駆600psスーパーカーは、いまだかつてなかった。12年、春には上陸する。楽しみだ。

■印象に残ったそのほかの輸入車
MベンツCLS63AMG@サンディエゴ
BMW6シリーズ@ケープタウン
M・ベンツCLS63AMG

2代目となる4ドアクーペCLSのハイパフォーマンスモデル、M・ベンツCLS63AMG。AMGが新開発した最高出力524ps(パフォーマンスパッケージは557ps)の5.5リッター直噴ツインターボエンジンに7速スピードシフトを組み合わせる。価格は1645万円



2月 トゥアレグvsグランドチェロキー SUVの進化に驚く

VWトゥアレグ

国内市場ではVWのフラッグシップとなる大型クロスオーバーSUV、トゥアレグ。ハイブリッド(898万円)とV6(623万円)をラインナップする。ハイブリッドは最高出力333psの3リッターエンジンに、最大出力46psのモーターを組み合わせた。0-100km/h加速は6.5秒、10・15モード燃費は13.8km/lを達成する


イベントとしては、軽量化に積極的な取り組みをみせる、アウディのライトウェイトテックデイが白眉。なかでもランボルギーニの新CFRPプラント見学は、大いに刺激的で、そこから様々な企画が生まれたものだ。

クルマとして印象に強く残っているのが、グランドチェロキーとトゥアレグだった。クラスは微妙に違うのだけれども、ともによくできたプレミアムクロスオーバーSUVで、特に乗り心地のよさに感動した。こうゆう時代だから、なかなか目立ってこないけれども、いずれも今年を代表する完成度の高いモデルである。

■印象に残ったそのほかの輸入車
アバルト695トリブートフェラーリ @東京
アウディクワトロコンセプトのプロトタイプ@ミュンヘン
アバルト695トリブートフェラーリ

アバルト500をベースにアバルトとフェラーリのコラボレーションによる全世界1696台限定モデル、アバルト695トリブートフェラーリ。日本にはこのうち150台が導入され、価格は569.5万円。最高出力180psの1.4リッターターボエンジンに5速シーケンシャルミッションのアバルトコンペティチィオーネを搭載した



3月 悲劇の最中に乗っていた SLS AMG

M・ベンツSLS63AMG&300SL

往年の名車M・ベンツ300SLとSLS AMG。1954年に登場した300SLは鋼管スペースフレームにアイコンとなるガルウイングが備わっている


すべてが停まってしまった月だった。忘れたくても忘れられない、忘れてはいけないカレンダーがある。

ボクはその日、SLSに乗って伝説の300SLを訪ねる、という企画で、群馬県の太田にいた。朝からの撮影取材は順調に進んだ。オーナーの厚意で貴重な300SLガルウィングを堪能し、ランチを終えて残りの撮影を始めると、急に空が暗くなってきたのを思い出す。

雨かも知れない。撮影を急ピッチにこなし、何とか降られずにすんだとホッとして帰り支度を終え、SLSに乗り込みかけとき、それは起こった。

ゴォオと地鳴りがしたかと思うと、一瞬耳が真空状態になり、気がつけばあまりの揺れに、シートで尻をしたたかに打ち、片方のアシがサイドシルから外へと浮いた状態で、慌てふためいていた。なんとか外に飛び出すと、自転車のおばさんがよろめいている。頭上では、群馬銀行の太陽光パネルが何十枚ものたうちまわり、今にもクルマとボクの上に落ちてきそう。そして、SLSのガルウイングドアが、正にかもめの羽のように上下に揺れていた。

国道の信号はすべて消え、ショールームのガラスは崩れ割れ、瓦や看板が駐車場に散乱している。サイレンが激しく鳴るなかを、這々の体でトーキョーに向かったのだが、埼玉に入ったあたりからようやく事態の深刻さを理解した。県境の川を、橋の強度が心配になるほどの人が渡ってくる。歩道という歩道は人で溢れ、ストップランプは永遠に続いているかのよう。ラジオを通じて、次第にあきらかになってくる惨劇のディテール……。

結局、この日は、およそ80kmの行程を12時間以上かけて帰った。徒歩を余儀なくされた方々のことを考えると、ラッキーである。もちろん、災害に遭われた皆さんに比べれば、幸運この上ない。
フィアット500ツインエア

フィアット500に追加設定されたツインエア。最高出力85ps/最大トルク145Nmを発生する875ccの直列2気筒ターボエンジン、ツインエアを搭載する。ハッチバックのポップ(215万円)とラウンジ(245万円 写真)、オープンモデル500Cのラウンジ(279万円)をラインナップ


3月、最も印象に残ったクルマは、というわけでSLSなのだけれども、新車という意味では、震災前日に試乗したフィアット500ツインエアに感動した。


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