純粋に完成度が吟味された、大黒柱のフルモデルチェンジ
6世代目となる欧州Dセグメントのコンパクトサルーン。従来と同様に後輪駆動や前後重量配分50:50となる。サイズは全長4624mm×全幅1811mm×全高1429mm、ホイールベース2810mm。旧型より全長93mm、ホイールベース50mm拡大、トレッドもフロントが37mm/リアが47mm広くなっている
さぞ難しかったであろう、大黒柱のフルモデルチェンジを、BMWのエンジニアは高いレベルでぶじ成し終えた。ほぼ予想通り、と思わせつつも、乗り終えたあとには大きな称賛に至る。新型3シリーズ(F30)には、納得と驚嘆の両方があった。
まずは、スタイル。ひとめで新型だと思える。なぜなら人はまず、クルマをみるときに、顔から見つめるからだ。はっきりと低くワイドな面構えは、スポーツカーのZ4のようでもあり、新しくはじまるiブランドとの共通言語も見え隠れしている。これが、BMWの新しい顔つきなのだ。
そんなフロントマスクに心を奪われながら、サイドに回ってみると、あら不思議。ロングノーズをより強調しているとはいえ、どこをどうみても3シリーズにしか見えない。もちろん、ディテール的には以前のモデルとまったく違うのだけれども、雰囲気がそっくり。このあたり、デザイナーの苦心が伺える。いまや世界150カ国で販売される人気シリーズゆえ、新鮮味の加減に心を砕いた結果のエクステリアデザインだと思った。
後ろからの眺めは、赤いLEDの筋が少ない程度で、兄貴分の5や7と共通する。追いかけて、追い抜くまで、BMW一族だとは知れても、それが3なのか5なのか、ひょっとすると7なのか、よく分からない。ブランドとしてのイメージを強く共有させている、というわけだ。
実を言うと、主力モデルの328iを、直6ではなく、直4直噴ターボ、いわゆる今はやりのダウンサイジングエンジンを積んだということ以外、大きなニュースのないフルモデルチェンジである。いきおい、われわれの評価だって、新しい技術に目を奪われることがないから、純粋にクルマとしての完成度を吟味することに集中する。だから、“変わった”と思わせることが、顔つきは別にして、本当に難しかったと思う。
車体の拡張により前席の足下空間は15mm広くなった。スポーツラインは黒を基調に赤いアクセントでスポーティさを、ラグジュアリィラインはクロームパーツで高級感を、モダンラインは三次元の表面構造をもつウッドやパールクロームでモダンな美しさを表現する