修験者の里「洞川温泉」
大峯山を取り巻く主な登山口には女人結界門がありますが、大峯大橋口へは洞川(どろがわ)温泉街を抜けて向かいます。洞川温泉へは、弥仙館から車で10分。表通りの「行者(ぎょうじゃ)さん通り」には木造りの宿が軒を連ね、山が開かれる毎年夏の頃はホラ貝の音が響き渡り、多くの行者で活気づきます。行者とは修験者のこと。弥仙館は温泉ではないので、温泉好きなら日帰り湯ができる「洞川温泉センター」へどうぞ。吉野杉を使用した建物に桧の浴槽。単純温泉の優しい湯で旅の疲れがとれますよ。結界門へは、洞川温泉街から車で10分(宿からは20分)位ですが、道中に立ち寄りたい場所が幾つかあります。先ずは龍仙寺。大峯山を開いたとされる役行者(えんのぎょうじゃ)が泉を発見して以来、修験者はここで水行の後、道中安全を祈ってから、山へ向かうしきたりとなっています。そして、安産祈祷所としても知られている母公堂。役行者が山中で修行をしていた時、母が訪ねて来ては下山してこの場所で会ったと伝えられています。
錆びない水?!
洞川には名選百選の湧水が3カ所ありますが、その一つが「ごろごろ水」。楽しいその名は鍾乳洞を流れる音から名づけられたそう。驚くのはその抗酸化力! この地区は花崗岩と石灰岩が混在する特異な地層で、流れ出す水は鉱物が豊富でPHが高く釘を入れておいても錆びません。この「ごろごろ水」はペットボトルにされて宿で販売されていますから、お土産ならお茶目なひょうたん型などいかがでしょう。人間も錆びずに若々しくいられるかもしれませんね?!さあ、いざ結界へ。大峯大橋を渡って続く杉林の道の先に結界門はあります。本当にダメ? 少しくらいなら……。と思っていたアナタ。迫りくる石柱に書かれた「従是女人結界」という圧倒的な文字を目の前に門をくぐることができるでしょうか。女性ならば心静かに手を合わせましょう。
水と芸能の神様
さて次のハイライト、芸能の神様「天河大辧財天社」がある中心部へ戻りましょう。水の精である辨財天女は、音楽や芸能の神様としても有名で、境内にある舞台では能の奉納が現在も毎年行われています。中央に弁才天女、右に熊野権現、左に吉野権現がお祀りされており、神仏習合の形態を今も残す貴重な社です。拝殿の前に立ったら3つの鈴の形をした大きな五十鈴を鳴らして手を合わせましょう。この鈴は社に伝わる独自の神器で、3つの球形の鈴は、それぞれ、「いくむすび」「たるむすび」「たまめむすび」という魂の進化にとって重要な3つの魂の状態(みむすびの精神)を表しているそう。私は社務所で売られている同じ形をしたストラップを身につけています。
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