子供なし夫婦の老後資金はどれくらい必要か
子どものいない夫婦には、生活費が足りないからといって「仕送り」をしてくれる人はいません。だからこそ老後資金はしっかりと準備しておく必要があります。最低限必要な生活資金は次のように考えます(夫が先立った場合)。 さらに予備費(娯楽費や医療費、介護費用など)として1000万円程度は上乗せしたいところです。
・夫婦時代:現役時代の生活費×70~80%
・妻ひとり時代:(現役時代の生活費×80%)×70~80%
具体的なケースで計算してみましょう。
●老後資金の計算例
夫・妻ともに65歳、夫が65歳でリタイア。夫婦期間20年、妻ひとり期間4年(※1)。年間支出327万円(※2)
・夫婦期間:327万円×20年=6540万円
・妻ひとり期間:327万円×70%×4年=916万円
・予備費:1000万円
・最低限必要な老後資金:7456万円
⇒予備費も含めた老後資金:生活資金+予備費=8456万円
(※1)男性65歳の平均余命が20年、女性65歳の平均余命が24年であることから設定(厚生労働省「平成25年簡易生命表」より)
(※2)総務省「平成25年家計調査」の高齢夫婦無職世帯の家計支出額より
平成25年簡易生命表によると、10万人の出生に対して生存数がおおよそ3分の1になる年齢は男88歳、女93歳です。その場合に必要となる老後資金は9666万円(生活資金8666万円、予備費1000万円)。元気な高齢者が増えていることを考えると、これくらいの期間の準備はしておきたい。そんな気がします。
とはいえ、これをすべて自前で用意しなければいけないわけではありません。準備すべき金額は「必要な老後資金-生涯で受給する公的年金(企業年金を含む)」で、一般に3000万円程度に落ち着くようです。
妻がもらえる遺族年金は意外と多い?
老後、特に妻ひとり期間は年金が頼り
一般的に「夫を妻が看取る」ことが多く、また妻の年金が少ないので、妻ひとり期間の生活費を年金で賄えるのか不安を持つ人が少なくありません。そんな不安を解消するには、遺族厚生(共済)年金のおおよその額を「ねんきん定期便」を参考に計算しておくといいでしょう。
妻が厚生年金(以下、共済年金も含む)に加入した期間がある場合、遺族厚生年金は、次の2つの計算式で算出され、どちらか有利なほうが自動的に選択されて支給されます。
1. 夫の老齢厚生年金×3/4……(あ)
2. 本人の老齢厚生年金×1/2+(あ)×2/3
支給される遺族厚生年金の内訳は「本人の老齢厚生年金額+遺族厚生年金額-本人の老齢厚生年金額相当額」です。つまり、遺族厚生年金額と同額になります。
本人の老齢厚生年金が高額の場合は、本人の老齢厚生年金を受給し、遺族厚生年金は受給しないという選択肢もあります。
●夫の死後、妻がもらえる年金額の計算例
夫:老齢基礎年金77.2万円、老齢厚生年金120万円
妻:老齢基礎年金77.2円、老齢厚生年金30万円 の場合
・夫婦で受給する年金
夫の老齢基礎年金+夫の老齢厚生年金+妻の老齢基礎年金+妻の老齢厚生年金
=77.2万円+120万円+77.2万円+30万円=304.4万円
・遺族厚生年金
120万円×3/4=90万円
・夫の死後、妻が受給する年金
妻の老齢基礎年金+妻の老齢厚生年金+遺族厚生年金-妻の老齢厚生年金相当額
=77.2万円+30万円+90万円-30万円=167.2万円
総務省「平成21年全国消費実態調査」によると、高齢無職単身世帯の女性の年間支出は約192万円です。上記のケースでは、公的年金で生活費の約87%程度が賄えます。遺族年金は意外と多いと思いませんか?
次のページでは、お金以外にも準備しておきたいことについて解説します。