好きな天種と好きな蕎麦の組み合わせも一興
交差点の中心と向き合う扉から中に入ると、外観に負けない落ち着いた歴史を感じる空間が広がります。古いながら隅々まで掃除が行き届いている店内。清々しいですね。入口左手には2階の座敷へと上がる階段がありますが、この日はランチ客で込み合う12時台を避けての入店だったので、知人2人と1階の4人掛けのテーブルに腰を落ち着けました。100年以上の歴史ある蕎麦店では、14時くらいから夜の営業まで“中休憩”をする店も多々ありますが、こちらの店は“通し営業”。混雑するランチ時間をずらして、ゆったりと食事ができるのも嬉しいところ。
この日は、「白海老天せいろ」(1650円)と迷いましたが、「桜えび天せいろ」(1300円)をオーダーしました。あらかじめ蕎麦とセットになっているメニューもたくさんありますが、同店での個人的なお気に入りは、季節の天種です。単品で「ちりめんじゃこの天種」や「穴子の天種」と、同じく単品で「もりそば」や「ごぜんそば」を付ける、そんな“オリジナルのセット”を楽しんだりするのもいいですね。
出てきた桜えびの天種は大きく丸く、サクサクに揚げられています。天種を箸で崩しつつ、少しずついただき、もりそばをかき込む……至福です。
ご飯ものと蕎麦のお得なセットメニューも
虎ノ門砂場のかつての贔屓(ひいき)客には、江戸城無血開城の立役者の1人である山岡鐡舟や、高橋泥舟、勝海舟、いわゆる「幕末の三舟」の名前が挙がります。その後も、山本五十六や鳩山一郎、田中角栄ら時の権力者の名前も……いやはや。今来店の方々にも凄い人がいるかも知れない、などと周囲をそれとなく窺ってみたりしたくなりますね。同店には、「半かけと小玉丼」(900円)や「半かけと烏賊と長ネギのかき揚げ丼」(1000円)など、蕎麦と丼のセットメニューもあります。同行の知人はこの日、「生姜切りとしらすご飯」(1000円)をチョイス。ビジネスマンには嬉しい料金です。私も少し分けてもらいましたが、生姜切りは、ほのかな生姜の香りが上品な仕上がり。一方、しらすは茗荷、紫蘇とともにごま油で合えるという、しっかりご飯が進む一品でした。次の季節にはどんなセットが登場するのか楽しみになります。
虎ノ門砂場では、他の老舗蕎麦店同様に、お酒のおつまみ類も充実。土曜日など仕事がない日には、昼から焼き鳥や玉子焼き、季節の天種などをつまみながらゆっくりと飲みたい一店です。ランチ中、おしながきを眺めながら、そんな“憧れの休日昼飲み”を想像してしまいました。
時の権力者らに愛され、廃藩置県の翌年から続く蕎麦店で、ランチはいかがでしょう?
■虎ノ門大坂屋砂場
住所:東京都港区虎ノ門1-10-6
TEL:03-3501-9661
営業時間:11:00~20:00 (土曜日は11:00~15:00)
定休日:日・祝
地図:Yahoo! 地図情報