トリックアート
ガイド:では、10月26日に発売のメジャー移籍後ファースト・アルバムとなる『メンタルヘルズ』についてさらに伺っていきましょう。ジャケは通常盤と初回盤で鏡の前に立つ女子が違いますが、よく見ると骸骨(今の人はスカルって言うでしょうが・・・)が浮かび出るトリックアート!
このジャケは誰のアイデア?
骸骨錯覚アイデアは天馬からの提案ですが、インディーズ時代にもこういうアートワークがやりたいねといって構想をずっと温めていたんです。やはり今までの作品を見てみると、このジャケではなかったなと思うんですよね、今回の『メンタルヘルズ』でやっと世界観がカチッとはまったので絶対今のタイミングだと思い「骸骨錯覚をやろう!」と再度提案しました。
骸骨錯覚は、一世紀以上前から世界各国で様々なアレンジが加えられてきたトリックアートの代名詞的アイデアですよね。今回「少女」という言葉がタイトルから初めて消失したことにより、少女目線であった箱庭的世界観から少女を見つめる他者をも包括した世界観へと視点が拡張してしまった。それにより、カメラワークもよりズームアウトして、鏡を見つめる少女、更にその少女を見つめる誰かの視点がそのまま今回のジャケットに採用されている。少女を取り囲む世界は極めて普通であり日常であろうが、少女の目に映るそれは髑髏の影がたゆたう地獄なんです。心の地獄は震災以後、この国に静かに横たわる声なき声、押し殺された感情でしょう。我々がその感情を凝縮し、涙のように零れ落ちたものが今回のアルバムに他なりません。
堕天使ポップ
ガイド:オープンニングの「堕天使ポップ」……ひねくれ具合も素敵です。堕天使ロックではなく、あえて堕天使ポップなところも好きです。以前も「妊婦はポップ」とか、「前髪ぱっつんオペラ」とか、あえてロックじゃないのですよね。ロックって「ロックだ」と言った時点で、ロックではない。いや、こんな事言うと、今後、○○○ロックという曲が作り難くなるかな。
浜崎:
ポップと言っている割にロック、パンクの色が非常に強いのもまたアーバンギャルドなのですが、インディーズ3作目のアルバム『少女の証明』でアーバンなりのポップ・ロックの断片が見えた気がしたんです。それで今一度自分達の原点というか初期衝動に立ち返って思い切り多幸感のあるようなサウンドと、ファーストインプレッションを目指しました。
松永:
早川義夫が「からっぽの世界」の歌詞を耳元で囁くとき、声なき声は僕のペンを書き立て、文字を連ねさせ、結果それが歌詞になりました。しばしば見かける「アーバンギャルドはロックかポップか」というtwitter規模での論争は氏の在籍したジャックスやはっぴいえんどが的となった「日本語ロックは可能か否か」という論争を思い出させますが、我々にとって最も計略的なロックンロール表現がポップという手法であり、テクノポップという政治スローガンであるというメッセージを残し、屋上から飛ぶことで、或いは思いとどまることで、この曲は成立するといえます。堕天使とは人間の別名ですが、我々は腐ったミカンではなく、人として愛を説きましょう。
浜崎:
テクノポップと我々が謳っているのはサウンドは勿論なのですが、テクノポップが生まれた背景や思想が好きでテクノポップだと主張しています。個人的にジャンル分けは余り好きではないのですが、カテゴライズすること・されることにより人に説明するときや手に取りやすいと思ってもらえればなんでもありだし、その人が思ってくれたカテゴリーで構いません。といいつつもやはり日本人ですので、何をやってもジャンルはJ-POPだと思っているんですけどね。
(2曲目の「スカート革命」は前回のインタヴュー「メジャーデビュー反対?!アーバンギャルド」をぜひ参照してください。)