新たに位置づけられた高齢者の住まいと誕生の経緯
新しい制度として始まる「サービス付き高齢者向け住宅」。福祉業界への転職を希望している方にとっては、聞きなれた特別養護老人ホームやグループホーム、有料老人ホームと同じくらい今後中心となるサービス形態の一つとなっていきます。新たな就職先となるサービス付き高齢者向け住宅、面接試験に臨むなら簡単ながら住宅の概要を知っておくことをお勧めします。そこで今回は住宅の概要を、次回はそこでの主な働き方について説明します。サービス付き高齢者向け住宅
いままで国土交通省と厚生労働省は各々の法律の下で高齢者賃貸住宅と有料老人ホームを管轄してきました。サービス付き高齢者向け住宅とはその両省がタッグを組んで、一人暮らしや老々介護の高齢者が安心して生活できる住まいを確保する取組みで創設されたものです。
3つの住宅制度が廃止され、サービス付き高齢者向け住宅に一本化された背景には高齢者を取り巻く現状に待ったなしの状態が迫っているからです。日本社会は急速に高齢化が進んでおり、特に単身者や夫婦のみの世帯が急増しています。そこで今後増え続ける高齢者の住居を提供することが極めて重要な課題となってきました。
杖をつき一人歩く高齢者
一方他の先進国をみると、早い段階から高齢者住宅を拠点として、住宅と介護、住宅と医療、住宅と介護・医療など、互いに連携したサービスを重視した高齢者住宅の供給に取り組んでいます。例えば全高齢者における高齢者住宅の定員数の割合を比較すると、英国の8.0%、デンマークの8.1%に比べて日本は0.9%と極端に低いことがあげられます。そのため国は2020年までに現在の0.9%から3~5%と引き上げる目標を掲げました。この目標を達成するには今後10年間で60万戸が必要となります。これは1年間で6万戸のペースで設けなければならない計算になります。現在の供給数からいくと、今後倍以上の速度で建設を進めないと目標の60万戸に届かないので、国は建築費の補助や税制優遇にて推進を後押ししています。
増え続ける高齢者の住宅対策、入居待ちの解消問題、他の先進国と比べて極端に低い供給数、これらの諸問題を解決するため既存の高齢者賃貸住宅制度を廃止して今回の改正に至りました。
一定の品質維持が考えられている高齢者の住まい
満足や安心があらわれている手
従来の高円賃、高優賃、高専賃は新たに「サービス付き高齢者向け住宅」としての登録基準を満たさないと、有料老人ホームとして登録するか、それもできなければ入居者への生活支援を行わない一般の賃貸住宅と同様の扱いになります。そのため一定の品質が維持された高齢者向け住宅と位置づけられるようになります。
新たな就職先として視野に入れる高齢者の住まい
さらにサービス付き高齢者向け住宅の「サービス」を提供する部分については、少なくともケアの専門家による安否確認と生活相談サービスを提供することが義務化されました。ケアの専門家には、社会福祉法人、医療法人、居宅介護サービス事業者の職員、医師、看護師、介護福祉士、社会福祉士、介護支援専門員、ヘルパー2級以上の資格を有する者とされています。このケアの専門家が日中常駐してこれらのサービスを提供し、職員が常駐しない夜間の時間帯などは、緊急通報システムにより状況把握サービスを提供します。サービス付き高齢者向け住宅のカテゴリーは、上記のような最低限のサービスだけを付けた自立者向けの住宅から、診療所、訪問介護、訪問看護、デイサービス、定期巡回・随時対応サービス(新設)など、併設する事業によっては幅広い内容の住宅が提供され、重度の方の受け入れなども可能とします。例えば、訪問介護事業所がサービス付き高齢者向け住宅を24時間運営することで要介護者が夜間を含め安心して生活できる住宅となり、医療法人が手がける場合などは積極的にターミナルケアまでを受け入れることが可能となるなど多様な住宅が混在することになります。それに伴い必然的に併設事業所が開設されるため新たな職場も生まれる機会となるでしょう。
近隣住宅の雰囲気