スーツケース1つでも困らない
飾られた花がいっそう引き立つ、スッキリしたデスク
ブリスベンに到着して数日経ったころ、阿賀さんはふと気がつきました。
「あれ? 私、たったこれだけの荷物しか持ってこなかったのに、全然困っていない。必要なモノは全部ある。――だったら、あの私の部屋にある、膨大な数のモノって、いったい何だったんだろう?」
結局1ヶ月の滞在の間、阿賀さんは、必要最低限のモノ以外、何も買うことはなかったそうです。お友達におみやげを買ったくらいで、それさえも、食べたらなくなるお菓子。
阿賀 旅行のおみやげって、いただいて困ること、時々ありますものね(笑)。
教科書も日記も、全部捨てた
ブリスベンから帰国してすぐ、阿賀さんは猛然とモノを捨て始めました。
阿賀 「これは思い出だから」と大事にしまいこんでいた小中学校の教科書は、デジカメで撮影して捨てました。日記や手帳も、特に大事な部分だけ書き写して、同様に捨てました。一度読んだだけで読み返さない本も、全然着ていない服も、全部! それはスッキリしましたよ! あれだけギュウギュウ詰めにしていた部屋が、一気にガラーンとなって、我ながらビックリです。それまでも、本当はわかっていたんだと思います。自分は物を持ち過ぎているんだって。海外で最低限のモノで1ヶ月過ごしたことで、やっと行動に移せたんですね。
大切なものは、モノではなく「自然」
ガイド ブリスベンでの1ヶ月は、それほど強烈だったということですか?
阿賀 うーん、強烈というより……。私、帰国して1ヶ月ぶりに新宿のネオンを見て、クラクラしちゃったんです。それまで、ブリスベンの広~い空を眺めていたので、あまりにも強烈で…。そして改めて、自分は”自然”が大好きなんだ!って再認識したんです。
阿賀さんの親ごさんの実家は、福島県の会津地方。豊かな自然に恵まれたこの土地で、阿賀さんは子供の頃の夏休みを楽しく過ごしました。その頃のキラキラした思い出がつまっている会津の山や川が、今でも大好きだそうです。
阿賀 でも、そんな自然が、私が大きくなるにつれて、開発のために少しずつ失われていくのを見て、悲しい気持ちになって。それが、私が大学で環境学を専攻した理由なんです。