「創造農村」がいま熱い!

篠山

古民家レストラン「ささらい」の藤岡シェフ。有名な芦屋ぷりんのオーナーでもある。おいしい素材を探して篠山にたどり着いた

天守閣が一度も立たなかったという不思議な物語を持つ城址を囲み、時が止まったような町家が軒を連ねる小さな町が、今とても熱い。そこにあるのは、世界的デザイナーの町家ギャラリーや、若者がIターンして開いたショップの数々。江戸時代から続く山椒漬け屋さんの隣には、町家を改造したイタリアンレストラン等々、新旧のバランスもみごとだ。高さ制限の条例のおかげで無粋な建物や看板もない。

そして、里山に目を向ければ、千軒以上の茅葺き民家が残り、周辺の新鮮野菜や乳製品を求め、この地にやってきたシェフや料理職人の方々が、数々の隠れ家レストランを開き、週末には予約が取れないほどの盛況を誇っている。

この町は、京阪神から車で1時間半。盆踊り唄・デカンショ節やイノシシのぼたん鍋・丹波の黒豆で有名な兵庫県「篠山」。今後、おそらく、由布院や小布施などと並ぶ、町づくりのモデルの5本の指に入ってくるだろう。市民の創造によりポスト大量消費時代の新しい生活システムを生む「創造都市」(Creative city)ならぬ、世界で初めての「創造農村」(Creative village)を目指している。

 

集落が運営する一棟貸しの農家宿「集落丸山」

この町の谷あいに、全く新しい発想の宿「集落丸山」がある。かつて、BRUTUSで紹介されて以来、いくつかのメディアとクチコミだけで伝えられている、知る人ぞ知る、築150年の農家一棟貸しの宿だ(「ほの穂」と「明かり」の2棟)。

集落丸山

篠山市丸山の風景。黒豆畑と田んぼに囲まれ古民家が肩を寄せ合う

2名で泊まった時の一泊二食料金は、一人3万6000円と決して安くはない。この料金のために、客層はCreative Classにうまく絞られているように感じる。そのため、なかなか知られない一方で、コンセプトが守られているのだと思う。ただ、田舎暮らしの体験時間といい、その素晴らしい食事といい、その価値はより多くの方に伝えたい。そこで、この場でも、表面的な価格では説明しにくい「集落丸山」の価値を少しだけでもお伝えすることにしたい。

この宿は、集落の人たちが運営している。どこかの業者が入ってきているのではない。街全体のプロデュースをする一般社団法人ノオトと5戸19人の集落の皆さんでLLP(有限責任事業組合)を作り、知恵を絞りながら運営しているのだ。手垢の付かない自然体のサービスはそこから生まれているのだろう。宿泊客も、一夜だけの集落の住民になっていく。

次ページで、「集落丸山」での宿泊体験をご紹介!