知らずしてカニ好きを語ることなかれ 

自分も含めてだが、日本人のカニ好きはどうしようもない。カニと言われればポンと2~3万円は平気で出す。そのカニがどんな素性かも分からずに……。とはいえ、カニはやっぱり美味しい。その豊かな旨味を味わうと幸せになるし、赤色をして脚を広げる華々しさもハレの気分にさせてくれる。そこで、無類のカニ好きならば知っておきたい貴重なカニをご紹介しよう。有明海に面した「たら竹崎温泉」(佐賀県太良町)の名産である「竹崎かに」だ。
鶴荘

竹崎カニと佐賀の日本酒は本当に良く合う


月の引力で美味しくなる

鶴荘

港を目の前にする鶴荘

太良町は佐賀県の西南に位置し、多良岳から有明海に向かって扇状に広がる漁師町である。その南端の竹崎漁港を囲むように「たら竹崎温泉」が湧く。

国道で太良町に入ると、「月の引力が見える町」と書かれた看板が目立つ。最大で6メートルという国内屈指の干満差により、広大な有明海の干潟が現れるのだ。

「有明海の潮が引いて干潟になることにより、泥に住む微生物に陽が当たり、栄養分を蓄えます。有明海のワタリガニはその微生物を餌にしているのでうま味が出るのです」。竹崎かにのうまさの秘密を有明海漁業協同組合大浦支所の赤木勝蔵さんが教えてくれた。月の引力が作った干潟に棲むワタリガニだからこそうまいというわけだ。近海の味覚であるワタリガニだが「捕獲高が年々減っている」という。

温泉は有明海を眺めながら 

鶴荘

貸切にできる露天風呂

今晩の宿は、竹崎漁港の目の前に立つ15室の和風旅館「鶴荘」。有明海に浮かぶ岩礁「鶴の瀬」から名付けたという。玄関では明るい女将が出迎えてくれた。

夕暮れを前に、早速広々とした大浴場の湯船に浸かった。湯口からは湯が豊富に注がれている。漁港の向こうに有明海、遠くには雲仙の普賢岳が見渡せる。大きな窓から流れ込む海風が火照った肌に心地よい。お湯はさらりとして肌のなじみが良い。たら竹崎温泉の各旅館では日帰りプランをやっているので、日帰りで温泉を楽しむこともできる。

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