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新・賃貸時代(3)大和ハウスの女性向け戦略(2ページ目)

去る決算発表で、賃貸事業が前年同期比+10%と大幅増加した大和ハウス工業。賃貸住宅ブランド「D-room」は人気女優、上野樹里さんの起用で知られていますが、それらを含めた最近の女性入居者を意識した賃貸戦略展開が功を奏したようです。その具体的中身を、訪問取材!

河名 紀子

執筆者:河名 紀子

家づくりトレンド情報ガイド


女性入居者が一番気になる「セキュリティ」

侵入箇所

侵入箇所は窓からが多く、女性にとって心理不安も大きい

今回、取材に応じていただいたのは、同社営業本部集合住宅事業推進部長の山下氏。「世の中、半分は女性。当たり前ですが賃貸入居者も半分は女性です。このご時世にあって女性入居者が賃貸住宅選び(お部屋探し)で重視するのがセキュリティ。賃貸住宅の1階が女性に敬遠されがちなのも、防犯が気になるためです。」

山下部長によれば、入居者が賃貸住宅選びで重視するポイントは「立地」「賃料」「広さ・間取り」「設備」などですが、女性入居者は特に「防犯設備」を重視する傾向にあるとか。

ゲート

電動チェーンゲートをするなどして敷地を防犯包囲している

一方、賃貸住宅を建築する土地オーナーが一番頭を悩ますのは、空室対策。
「セキュリティに配慮することで、1階でも女性が安心して入居でき、1階の空室の解消できればオーナー様にとっては入居率も収益もアップする好循環が生まれます。」

女性入居者の心理に近づいて防犯設備を充実させた手法が奏功したといえるでしょう。

商品開発部の女性スタッフによる「女子向け」仕様の提案

防犯砂利

不審者に砂利音でよせつけない防犯砂利。設備やエネルギーを使わない工夫の一つ。

同社では、この6月29日、女性に焦点をあて、「セーフティ&セキュリティ」「ビューティー」「収納」「デザイン」という4つのテーマのアイテムや仕様を備えた、「セジュールウィット-SW(2階建)/セジュールオッツ-SW(3階建)」を発売。女性が気になるポイントを同社の商品開発部女性スタッフが商品化したそうです。

ホームセキュリティに加えて、目に付かない位置への物干しの設置や部屋干しのためのアイテムを提案したり、大きな鏡付きの幅広の洗面台は幅が広く使いやすく、スツールを格納することもできるドレッサータイプ。

たくさんの服や靴をたっぷり収納できる専有面積の約10%の収納スペースや、一部の壁面にアクセントクロスを使うことでおしゃれなイメージになるなど、女性の心をとりこにする提案となっています。

入居者のメリットがオーナーのメリットに

配置図

建物全体をセキュリティシステムで包囲した配置図

これからの時代は、目に見える部分での差異化が難しくなった分、ホームセキュリティのような目に見えない部分、入居者のライフスタイルに沿った、暮らし方まで提案できるアイテムや仕様、これらがいかに入居者心理に寄り添った提案ができるかが、勝負の明暗を分けることになりそうです。

とはいえ、設備をハイスペックにすればその分、建築費も上がって家賃に反映せざるを得ないということになっては、オーナーにとっては頭の痛い話。同社の場合は、ALSOKとの業務提携によりイニシャルコストとランニングコストを抑えることで、建築費への反映や入居者の負担を抑制することができたことが大きかったようです。

ガードセンター

どこまで防犯体制を整えているかを分かりやすく見せることも、これからの女性入居者には必要?

さらに、同社は先に述べた新仕様について入居者から喚起しようという試みを行い、女性ファッション雑誌に記事広告を載せることで、ターゲット世代へのアプローチも図る模様。

入居者の注目を集め、安定経営をしたい土地オーナーも喚起する戦略。同社が自信をもって提案する女子向け賃貸も、ますます好調となりそうな予感……。
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