今回の裁判と今後の行方
今回の最高裁では、更新料有効との判決が下されました。が、だからといって今後更新料が増加するようなことはないと思われます。ことぶき法律事務所の弁護士・亀井英樹先生は、今回の判決について次のように見ています。
最高裁の判決が「更新料条項が賃貸借契約書に一義的かつ具体的に記載され、賃貸借当事者間に更新料支払いの明確な合意が成立している場合には、賃借人と賃貸人との間で更新料条項に関する情報の質および量並びに交渉力について、看過しがたいほどの格差が存すると見ることもできない」と判示して、更新料条項が消費者契約法10条との関係でも有効となる条件を明らかにしています。
その条件というのが、「消費者の利益を一方的に害する」条項であった場合。例えば、更新料の額が賃料の額や賃貸借契約が更新される期間などから考えて高すぎる場合には、消費者契約法第10条の基本原則に反しているため、特段の事情があると考えられ、更新料条項が無効になります。
今回の裁判では、どの事例においても更新料条項が契約時に明確に記載されており、借主にとっても一方的に利益を害するものではないため、消費者契約法第10条には該当せず、更新料条項は有効であるとの結論になりました。
これまで下級審判例では更新料条項が有効であったり無効であったりと結論が分かれていたため、様々なトラブルがありましたが、今回の最高裁判決である一定の判断基準が示されたため、今後の賃貸実務においては更新料条項に関するトラブルは鎮静化すると見ています。
私も、今回の判決により更新料は有効となりましたが、だからといって更新料が今後増加することはないと考えています。なぜなら、今賃貸市場は物件の供給過剰のため、賃料以外の費用(例えば礼金や仲介手数料など)は下落傾向にあります。退去を促進する可能性のある更新料は、供給過剰のマーケットにおいてはなくなる傾向にあるでしょう。
賃貸業界でも、更新料は「みなし賃料である」という性質をきちんと説明する流れがでてきています。
ですから、今回の判決は「更新料有効」であっても、決して借主に不利なものではないと思います。
今回の更新料判決を受けて、不動産会社に緊急アンケート実施してみました。その結果をこちらの記事で紹介します。
「更新料有効」判決、緊急アンケートを実施!【前半】 【後半】