隣地などの地盤との間に高低差があるときには、その傾斜角度や高さなどに応じて適切な「擁壁(ようへき)」を築造することが求められます。しかし、この擁壁自体はごく一般的にみられるものであり、すでに擁壁がある中古住宅や土地を購入するケースも少なくありません。
検討する物件に擁壁があるとき、どのような点に注意するべきなのかを考えてみましょう。
なお、擁壁に関する注意ポイントは比較的多いため、これから4回に分けて解説をしていくことにします。
どれほど頑丈に造られた擁壁でも、永久に機能を維持できるわけではありません。数十年経つうちに劣化が進む場合もあるでしょう。古い擁壁がある物件を検討するときには、特に注意してその状態を確認することが必要です。
しかし、比較的新しい擁壁でも亀裂やひび割れが生じている場合があり、「新しければ安心」というわけではありません。
擁壁に亀裂やひび割れがあれば直ちに危険だと即断するべきではないものの、もしそれが目立つのなら、購入を決める前に建築家や地盤の専門家などに相談や調査を依頼する程度の慎重さは欲しいものです。
また、擁壁の亀裂やひび割れを補修した跡があっても、中途半端な補修は根本的な解決には繋がりません。
もし、擁壁の造り直しが必要となったときには問題が大きくなりがちで、契約締結後、あるいは引き渡し後にそれが発覚すれば売主との間でトラブルへ発展することになるでしょう。
一方で、既存の擁壁を取り壊して車庫を造るような場合もあります。そのときは買主自身が事前に意識をして、工事費用の概算もあらかじめ把握しているでしょうが、逆に予期せぬ擁壁の補修工事で追加費用が発生すれば、資金計画が大きく狂うことにもなりかねません。
擁壁の工事は、ただブロックを積むだけ、コンクリートを流し込むだけといったものではなく、想像以上にコストのかかるケースが多いものです。その高さや面積にもよりますが、工事費用が数百万円、あるいは1千万円を超えたり数千万円になったりする場合もあります。
一方で、擁壁部分が草木に覆われ、亀裂などがあるのかどうかがなかなか分からないケースもあります。あるいは、擁壁が高過ぎて逆によく見えないこともあるでしょう。
さらに、古い石積みの擁壁など、それが大丈夫かどうかさえ分からないものもあります。
いずれにしても擁壁に問題があれば、簡単に解決できることではありません。少しでも不安を感じたら、購入を決める前の段階で専門家に相談をすることが重要です。
また、購入しようとする敷地の外側で「隣地が所有する擁壁」の場合であっても、同様に事前のチェックが欠かせません。
大きな地震があったときに住宅地の擁壁が崩壊するかどうかは、擁壁自体の構造や劣化状態だけではなく、地盤の問題や地下水の問題など、複数の要因に左右されるでしょう。擁壁の現状をよく確認するとともに、長年の間に表れている兆候を見逃さないことが大切です。
しかし、地盤の強度や地歴の問題を含めて事前に入念なチェックをすれば、擁壁のある物件だからといって無闇に避ける必要はありません。
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