便利なアルバイト手段としての日雇い派遣

「日雇い派遣」と聞くと、どんなイメージをもつでしょうか?「派遣で働く」の読者には、日雇い派遣で働いた経験をお持ちの方も多いかもしれません。コンサートなどのイベントや引越しなど日雇い派遣の仕事はさまざま。

実際、日雇い派遣で働く人には、家事や子育ての合間に働く「主婦」、学業の間に小遣いを稼ぎたい「学生」、本業のすきまをぬって収入を増やしたい「副業」などがたくさんいます。
type

出所:ワークス研究所「日雇い・短期派遣労働者の就業実態調査」

派遣会社に登録しておけば、自分の都合にあわせて仕事ができる派遣制度は、いまや格好のアルバイト手段になっています。この点は、派遣制度がもつ正の機能といえるでしょう。

日雇い派遣にあるネガティブなイメージ

しかしながら、世間では、不安定雇用のイメージがある派遣に「日雇い」という冠がつく日雇い派遣は、不安定極まりない劣悪な働き方だととらえられることがあります。2000年代半ば、ワーキングプアやネットカフェ難民の報道で日雇い派遣労働者が取り上げられたのに加え、同時期に派遣会社による賃金の中間搾取や偽装請負などが相次いで発覚し、大きな社会問題になったためです。このような悪質な派遣会社は排除・是正されて当然だと強く思います。

ただ、悪質な派遣会社がなくなれば、日雇い派遣に関連して現れる深刻な問題はすべて解決するのでしょうか?2011年にワークス研究所では、日雇い派遣で働く方々に聞取り調査を行いました。副業などではなく、日雇い派遣を中心に生活をしている方(上記グラフで「短期派遣専業」に該当する方)の中で、特徴的だった40代の男性のケースを紹介します。

彼は、最初の仕事を3年ほどで辞めて以降、正社員の職を10以上転々としました。成果を厳しく求められる仕事ばかりでしたが成果はあがらず、あちこちの職場でいじめにあってきた。この4年は日雇い派遣だけで働いています。安定した仕事や直接雇用を希望しているものの、採用試験に受かりません。最近では求職活動やスキルアップの勉強への意欲もわかなくなってきたといいます。実家暮らしですが、爪は伸び、髪はペタリとはりつき、何日か入浴していないようにみえます。

日雇い派遣から抜け出したいのに、それが叶わない。現在の雇用システムや能力開発機会では、ご本人の希望とは別に、日雇い派遣でしか働く場が得られないという現実がここにはあります。

ネットカフェで寝泊まりするなどのホームレス予備軍100人に聞取り調査を行った釜ヶ崎支援機構の報告書も、住居が不安定な状態で日銭を稼ぐ生活を続けていると、いずれホームレスにならざるをえないと警鐘を鳴らしています。報告書はさらに、そのような住居が不安定で日銭を稼がざるをえない状況に陥った背景には、出身家庭の貧困や低学歴、発達障害などの要因が複合的に潜んでいると指摘します。

「極端な働き方」だからこそ、多様性への配慮が必要

日雇い派遣で働く方の中には、絶対数は少ないにしても、極めて深刻な問題を有している方がいるのは事実です。その状況をどう改善していくのか、真摯な議論が求められている。

加えて、このような状況は一部であることにも、同じように関心を払う必要があります。というのも、積極的に日雇い派遣を活用している主婦やダブルワーカーであってさえも、「家もないようなヤツだろう」と見下された経験を持つ人が少なくありません。まったくの誤解であり、不愉快な事態。実態とかい離した印象論が独り歩きし、新たな偏見さえ生みだしているのです。

日雇い派遣は、日本で長らくスタンダードだとされてきた終身雇用と、企業との関係性も仕事内容も、働き方も対極にある、ある意味「極端な働き方」です。だからこそ、日雇い派遣で働く目的や事情、能力は個人差がとても大きい。日雇い派遣で働く人全員をひとくくりにするのではなく、多様な背景をみることが重要です。



※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。