東西に長い日本。サマータイム導入は企業単位?
始めは1時間早く
円周は360度、地球の経度が360/24=15度なので、15度刻みで1時間の時差が生じる計算です。日本では東経135度(15×9)の明石が標準時刻とされています。
サマータイムの導入方法には、標準時自体をずらす方法と、標準時はそのままで企業などの始業時刻だけをずらす方法の2つがあります。日本列島は東西に長いので、夏至の頃の夜明けの時刻を比べても、かなりの差があります。札幌では朝4時頃、那覇では5時半頃に夜明けを迎えます。8月15日で比べると、それぞれ30分遅くなり、札幌では4時半頃、那覇では6時頃が夜明けです。全国一律の標準時ではなく、始業時間を企業単位でずらす方法の方が実施は簡単でしょう。ただし朝の通勤通学時間、公共交通網に負担を強いることになります。
「時そば」という有名な落語があります。この落語を理解するには江戸時代に使っていた「不定時法」を理解する必要があります。日の出に行動開始、日の入りに一日の行動は終わりです。夜明けの前から朝六、五、四、九、八、七、日没後が暮れ六です。夜の時間帯もありますが行動しないのであまり関係ありません。現代人から見ると疑問点もありますが、太陽光線を浴びると人は活動するようにできているので日の出と共に行動するのは合理的にも思えます。間食タイムを指す「お八(おやつ)」は現在も生きている当時の考え方の単語です。もっとも東京の夏至だと昼間時間が14時間以上、冬至は昼間時間が8時間以下となり、活動時間にかなりの差が生まれます。
人体への影響は……? サマータイムが及ぼす悪影響
終に元に戻します
実は問題となるのが、この1時間。人の睡眠の周期は通常1.5時間とされています。初めの二周期(三周期)は眠りが深くなり、その後は浅くなるのが多くの人の睡眠周期です。睡眠周期を考慮すると、1時間早く活動するには1周期分、つまり1.5時間分、早く活動をスタートしないと日ごろの調子が出にくいということになります。
もしも以前と同じ睡眠周期を作り出すには、1周期分、早く寝付かないといけません。入眠までの時間を考慮すると2時間程度早く就寝状態になる必要があると考えられます。
睡眠周期はすぐには調整できないので、サマータイム開始時期は睡眠不足になる人が増える可能性が高いでしょう。車通勤の場合、遠距離だと日の出前後の明るさが変わる運転しづらい時間帯に運転することになります。諸外国でもサマータイムは交通事故の増加につながるという調査結果も発表されています。
先に書いたように、札幌と那覇では日の出が1時間半異なります。人の体は日光を浴びると体全体が活動を開始するようになっていますが、サマータイムが実施された場合、夏至からしばらくの間、西日本では日の出前に起床しないといけなくなる可能性が生じます。逆にサマータイムから元の時間に戻った時には、逆の形で就寝と起床時間を調整しないといけません。基本的な健康の基盤を守る「睡眠」の質を守ることを考えると、サマータイムの導入にはあまり賛成できません。
サマータイム導入時の体調管理のコツ
全国的にサマータイムが導入される可能性は低そうですが、一部企業ではすでにサマータイム導入が決まっています。また、浜岡原発の運転停止などをきっかけに、今後、突然サマータイムの導入が決まる可能性もゼロとは言えません。万一サマータイム導入が決まった場合は、導入までの期間に個別に睡眠時間を調節しておくことをお薦めします。サマータイムに関しては、備えあれば憂い無しは確かです。
(余談)サマータイムは節電にならない?
医学と直接関係ありませんが、サマータイム導入が節電につながるというシミュレーションには疑問が残ります。電力消費が最大の時間はもっとも暑い午後3時、お八時とされています。始業時間を1時間前倒ししても、午後3時はまだ仕事中、勉強中ということになります。朝の時間を早めることで節電になるという考え方は、単純に考えても疑問です。また、熱中症対策を考えると最高温度が30℃以上の真夏日は、体調管理のためにも空調の利用が欠かせません。各人がそれぞれの家などで個別に空調を使うよりも、一定の大きさをもった建物内でまとめて空調を使ったほうが電力総消費量は低くなる可能性が高いのです。