旅館/ちょっと高めの隠れ宿・旅館

おふたり様専用の宿 米沢湯の沢温泉「時の宿すみれ」(2ページ目)

おふたり様専用の宿。その宿は、ひとり旅も3人以上の客も受けない。二人客専門の温泉旅館。森の中にたたずむ10室の小さな宿では、極上の夕食が待っている。米沢牛の専門店が経営する「時の宿すみれ」。その経営スタイルは、多くのなじみ客を持つことで成り立っていた。現代の勝ち組旅館を紹介しよう。

井門 隆夫

執筆者:井門 隆夫

旅館ガイド

シズル感満点の米沢牛フルコース!

時の宿すみれ

すみれの真骨頂は、このダイニングで

18時から19時までの間の好きな時間にスタート。館内着でダイニング「すみれ庵」に行くと、グリルカウンター越しに鎮座する大きな冷蔵ショーケースに驚く。その中には、大きな肉の塊が収められている。その上には「米沢牛 黄木」の看板。そう、実はこの宿は、米沢牛の卸・販売を業とする米沢「黄木」の系列なのだ。

 
時の宿すみれ

カウンター越しのショータイム

夕食は、ステーキ・すき焼き・しゃぶしゃぶの中から選択する。迷わずステーキを選ぶと、やはり一番注文が多いという。そうだろう。目の前で網焼きしたり、グリルされる牛肉を見てしまうと、ステーキを頼みたくなる。わざわざ、ここまで来る外国人もいるという。

リピーターは必ず指定するというカウンター席に陣取る。二人ずつ、4カップル。鍋物のときは、テーブル席もある。 

 
時の宿すみれ

米沢牛の大トロのにぎり

山形の地酒を頼み、待つことしばし。最初の一皿は「しんしんのハムと山菜のプランタニエール」という春らしい一品。月替わりのメニューには、しんしんやセンボンなど珍しい部位も使われている。さすが、肉屋の経営だけある。

続いて、「外バラのベーコン」「外ももの刺身」「ランプのロースト」「牛トロのにぎり」と、米沢牛づくし。時の宿すみれでは、米沢牛のフルコースをいただくことができるのだ。

 
時の宿すみれ

満を持して登場「サーロイン」のレア

そして、8品目に、満を持してサーロインステーキの登場。この後、米沢名物の冷や汁が控えているのだが、脂がのり、口の中で溶けていくサーロインでノックアウトと相成った。

しかし、このコースはコストパフォーマンスがすこぶるいい。ぜひ、わかる人に来てもらいたいと願う。シェフとの会話の余韻を楽しみながら、デザートはロビーラウンジで……。

すっかり夜の帳がおり、森の草むらからは虫の音が聞こえてくる。最終の鈍行列車が、汽笛を鳴らし通りすぎていく。残された長い夜は、二人の時間。

そこには酔客の声もなく、カラオケの響きもない。隣室のテレビの音もなければ、子供の走りまわる声もしない。のんびりと、ゆっくりと、二人の空間を楽しもう。

なじみ客が支える経営

その昔、一般的に旅館の「一室当り宿泊人数」は3名を超えていた。今でも、団体主体の旅館は3名を超える。しかし、年々下がり続け、今では2.5名程度が平均的である。これまで旅館は一部屋に詰め込めば儲かる商売だった。その思いが抜けずに、グループを優先してしまう旅館も未だに多い。しかし、「時の宿すみれ」はそこをきっかり2名とした。おそらく、今後もこの数値は下がり続ける。いずれ、「時の宿すみれ」の先見の明が明らかになることだろう。

一方で、この宿はリピーターが多い。言い換えれば、営業コストがかからない。すなわち、知る人ぞ知る「倶楽部」だと言ってもいい。

良い宿とは、無駄なコストをかけず、馴染み客に支持される宿のことをいう。「おふたり様の宿」というコンセプト一発勝負で、多くの馴染み客を獲得した「時の宿すみれ」は、現代の勝ち組旅館と言っても過言ではない。予約はお早めに。

時の宿すみれ
住所:山形県米沢市関根12703-4
TEL:0238-35-2234
地図:Yahoo!地図情報

続いて、県境の蔵王連峰の向こう側、宮城蔵王の森にたたずむ、正真正銘の「倶楽部」もご紹介しよう。そこは、女性とシニアの楽園。
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