二人でゆっくりできる隠れ宿はないものか!?

貸切露天風呂や和モダンなベッドルーム、個室の食事処などが設えられた、しっぽりとした「隠れ宿」が全国で流行して久しい。非日常を味わえる格好のスタイルであることから、今でも人気がある。しかし、ややもするとクオリティの高くない宿があるのも確かである。安さばかりを過度に追求した結果だろうか、設備投資ができずに個室露天の湯は真水だったとか、喫煙グループ客と同宿となり、賑やかすぎてせっかくの記念日が台なしになったということも聞く。さらに、私にとって、究極の残念は、「山」まで行って「京風創作会席」を食べさせられることである。

そうそう、そうなのよ。でも、誰も言わないから、旅館も気づかない。
そんな声が聞こえてきそうだ。 

二人客のための「おふたり様専用宿」

そんな思いの方に朗報。二人で落ち着いた宿に泊まりたいという思いが通じたのか、日本でも「おふたり様専用の宿」が生まれつつある。その一軒、山形県・湯の沢温泉「時の宿すみれ」(米沢市)を紹介しよう。 
時の宿すみれ

おふたり様専用の宿「時の宿すみれ」は、森の中にある

時の宿すみれ」は、時おり、峠の橋梁越えをする山形新幹線のガタンゴトンという音が聞こえてくる、山中の森の中に立つ一軒宿だ。目の前には清流が流れ、霧でもかかれば、ノスタルジックな雰囲気が醸し出される。宿は、経営者黄木綾子さんの祖父が建てた温泉宿・すみれ荘の土地を引き継ぎ、2005年に開業した。その昔は、長逗留する湯治客でにぎわったという。

「二人のお客様がゆっくりと寛げる宿を創りたい」。そう考えた黄木さんは、周囲の反対の声をさえぎり、ひとつの理想の宿を創造した。

宿泊は、2名での利用者限定。ひとり旅も3名客も受けない。「なじみだから特別に」と、すみれ荘時代に懇意にしていた方々から言われても断った。おふたり様だけに「選択と集中」。言うがやすく行うが難い、この勇気が、新たなリピーターを呼んだ。 

時計のない部屋でグラスワインを

時の宿すみれ

こぢんまりした和室

客室は1階に2室、2階に8室の計10室。こぢんまりした和室もあれば、リビングとベッドルームに分かれた北欧風の部屋もある。来る度に違った趣を試してみるのも面白い。

ただし、どの部屋にも風呂は付かない。渓流か森を眺めながら入る源泉かけ流し大浴場や貸切露天風呂が部屋からも近いので、そちらに何度も通えば十分だからである。

 
時の宿すみれ

リビングの付いた洋室

そうそう。ここに来たらあまり必要のない、時計とテレビも部屋にはない。CDをBGMに二人でゆっくりと話をしよう。手持ち無沙汰だと思ったら、ロビーの「酒蔵」をのぞきに行こう。山形産の地酒や高畠ワインが、冷蔵温度の小部屋で冷やされて待っている。グラスを頼み、部屋で傾けると、きっと会話に花が咲く。

そして、「時の宿すみれ」の特筆すべき個性は、その夕食にある。


 
その夕食とは! 次ページで。