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旅館の朝食考

旅館の朝食が注目され始めている。日常の朝食がないがしろにされてきた現代、旅館の朝食こそ非日常なのかもしれない。

井門 隆夫

執筆者:井門 隆夫

旅館ガイド

保存食が基本


日常、朝食は簡単に済ますことが多い現代、旅館の朝食には、なにか非日常感の混じった、得も知れぬ期待感がある。ふだん朝食を抜いてしまう人さえ、なぜかお腹がすくのが、旅館の朝食の不思議な点であろう。
旅館にしてみれば、夕食の仕込みや調理に人手をかける分、朝食の調理まで手が回らないのが本音だ。したがって、朝食は、前夜に仕込みを終えたものに、当番の調理人だけでも簡単に調理できる(だし巻きなどの)品々が並ぶ。
しかし、かえってそれが、干物、おひたし、豆腐・納豆、漬物といった伝統的食材を使う理由となる。こうした食材は保存がきくうえ、発酵食品も多く、実にお腹にやさしい。
角上楼の朝食
繊維質(野菜、ご飯)、発酵食(味噌、漬物、干物)こそ、朝食の主役。
写真(上)は、渥美の「角上楼」の朝食。粒が立ったご飯、海老の頭が入った味噌汁、じゃこ、おひたし、サラダ、だし巻き。ほぼ完璧な旅館の朝食である。
流行りの旅館でも、基本は同じ。朝からお造りが出ることはない。かえって、料金が高くなると、量を増やしてしまう傾向があるようだが、それはよろしくない。発酵食・伝統食を基本に、お腹にやさしい、腹八分目の朝食がよい朝食である。
発酵食ということでの極みは、能登の「さんなみ」の朝食だろう。調味料には伝統的な「いしり」という魚醤を使うため、すべての食材が発酵食になる。なかでも、朝食に出る「べん漬け」(いしりに漬けた漬物)をちりちり囲炉裏であぶったり、「こんかイワシ」の三年漬けなどをアツアツごはんに乗せていただくと、もうそれは、最高の朝食になるのである。

藤もとの朝食
目移りがして、ついつい食べ過ぎてしまいそうになる「藤もと」の名物朝食ビュッフェ。
一方で、繊維質抜群の田舎料理といえば、代表格は奥満願寺温泉の「藤もと」の朝食ビュッフェ(写真)だろう。これでもか、と並んだ野菜の数々。この宿は肉屋さんを元祖とするので、ハーブ豚のハムなども食卓を飾ってくれる。
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