二階は秘密の隠し部屋?!
美味しいものでお腹を膨らませ、お酒もホドホドに効いてくると、「ここで眠ることができれば……」という思いが頭をかすめた記憶はないだろうか。居心地が良い店なら尚更だ。階下で一杯やって階上に消えていく……。そんな粋な飲み方ができるのが「二階宿」。
二階宿とは一階が食堂や酒場で、その二階が投宿できるようになった宿屋のこと。かつては駅前食堂兼旅館という宿がずいぶんあったが、コンビニエンスストアで24時間弁当が買えるようになり、多くはビジネスホテルに変わってしまった。でも全国を探せば今でも「二階宿」は残っている。その代表格、山形県蔵王温泉のど真ん中にある小さな宿、「ろばた」をご紹介しよう。
宿がある蔵王へは山形新幹線で山形まで行くのが一般的だが、仙台まで「はやて」に乗り、10分おきに出ている高速バスで1時間という方法もある。山形駅前から出ている蔵王温泉行きのバスで約40分。朝に東京を発てばちょうどお昼には到着する。
蔵王の夏は聖地トレッキング
爽やかな高原の空気を楽しみながら、お釜までトレッキング
蔵王連峰はかつて山岳信仰を集めた山。江戸時代には最上川を隔てて月山を「お西様」、蔵王を「お東様」と呼び、白装束に身を包んだ行者たちが参拝する聖地だった。その蔵王の登山口にある蔵王温泉は、宿坊または湯治場として賑わったという。今では秋口まで様々はトレッキングコースが用意されているので、高山植物たちを愛でながら、シンボルのお釜まで山歩きするのも楽しい。
強酸性! 硫黄泉で汗も脂もサッパリと
山歩きで流した汗は、名だたる硫黄泉(草津と同じ泉質)で流そう。 「ろばた」には敷地内から湧く源泉を引く温泉風呂があるが、せっかくなので外湯巡りをおすすめしたい。まずは、宿の隣にある共同湯「川原湯」が便利。木造の湯小屋が温泉気分を盛り上げてくれることだろう。大露天風呂は4月下旬から11月下旬までの営業。入浴料は大人450円
湯船の色は絵の具を垂らしたかのようなエメラルドブルー。お湯は川の上流にある源泉からそのまま注がれていてフワフワと湯の花が舞っている。これぞ火山系温泉の醍醐味とでもいおうか。強酸性の湯は余分な脂も落としてくれるから、湯上りには肌がサッパリとする。
歴史のある温泉街には必ずと言っていいほど神様が奉られているが、ここ蔵王温泉にも街を見下ろす高台に神社がある。その名も酢川神社。現在の蔵王に改められる前は酢川温泉と呼ばれていたようで、舐めたお湯の酸っぱさが衝撃的だったことがわかる。