美しき渓谷の街グルント
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渓谷の底に広がるグルント地区とアルゼット川。右側に広がるのが旧市街で、中央上部にラームの高台と聖霊砦が見える
環状城壁の一部をなすボックの砲台やラームの高台から眺めると、渓谷の底部を優雅な曲線を描いて流れるアルゼット川の周囲に木々や田畑・緑園の緑が輝き、銀屋根にパステルカラーの壁に彩られた家々が花のように立ち並んでいる姿を見ることができる。
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グルント地区の美しい水路
おばあさんがパンを抱え、小さな子供の手を引いて小路を歩いている。おじいさんは煙草を片手に木にもたれかかって川をボケーと眺めている。川のほとりにあるサン・ジャン教会から聞こえてくるミサの音はまっ青な空へ消えていく。
ルクセンブルクを囲むヴェンツェルの環状城壁
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アルゼット川とボックの砲台。断崖は掘り削られて地下要塞として整備された。開いた穴々にはかつて大砲が設置されていた
だからといって、別に圧迫されるような空気があるわけじゃない。19世紀に永世中立を保障されたルクセンブルクは多くの城壁や砦を撤去した。現在ルクセンブルクの城壁からは物々しさの多くは取り去られ、古い遺跡を思わせるようで味がある。
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スペイン・ルネサンスの影響を受けて15世紀に建てられた大公宮殿。16世紀に火事で再建された。現在迎賓館として使われている
ルクセンブルクは英国海軍の拠点ジブラルタル並みに難攻不落であったことから「北のジブラルタル」の異名を持つように、戦争の街であったのもまた事実なのだ。