ルクセンブルク市:その古い街並みと要塞群
ルクセンブルクのグルント地区。左の断崖が環状城壁の一部をなすボック城跡、ボックの砲台、中央の川がアルゼット川、右の塔がサン・ジャン教会
今回は、ドイツ・ベルギー・フランスに隣接したローマ時代以来の要衝で、強さと美しさを兼ね備えた街並みで観光客を魅了するルクセンブルクの世界遺産「ルクセンブルク市:その古い街並みと要塞群」を紹介する。
山々に囲まれた城郭都市ルクセンブルク
アドルフ橋から見た旧市街。ペトリュス渓谷に沿って城壁が築かれているのがわかる。尖塔のある右の建物がノートルダム大聖堂
緑色に輝く田園や、ブドウ園でパッチワークのように飾られた山々が現れては消え現れては去っていく。川の風は冷たくキラキラと清涼で、森の風は新芽の香り高くやわらかで、ブドウ園の風は日の光をたっぷり含んで暖かい。人と自然が何百年もかけて築き上げたヨーロッパの山の風景だ。
ペトリュス渓谷に架かるアドルフ橋
ルクセンブルクは古くからローマ(ローマ帝国)、フランス(フランク王国)、ドイツ(ゲルマン)をつなぐ要衝。この地を手に入れた領主たちは渓谷の中に堅牢な城砦を築き、緑と城と街が調和した強く美しい都市を築き上げた。
ルクセンブルクの城壁と多文化融合の街並み
高さ約45m、幅約85mのアドルフ橋。旧市街から新市街を望む
旧市街は緑広がるペトリュス渓谷に守られた天然要塞。ボックフェルゼン山を中心に、川や谷や岩を利用し、環状城壁で守りを固め、その内部に宮殿や教会や家々を築いて城郭都市を築き上げた。旧市街を新市街から見渡すと、ぶ厚い城壁や砲台が連なる様子が見てとれる。
城壁の中に広がるのはかつての政治の中枢だ。石やレンガで造られた歴史ある重厚な街並みなのだけれど、フランスやドイツの街とは少し違う。
イエズス会の建築家ジャン・ブロックによって設計され、17~19世紀にかけて建築されたノートルダム大聖堂
交通の要衝であり、各国の侵略を受けつづけたルクセンブルクは幾多の悲劇を経験したその代償に、各地の文化を融合させて美しい街並みを完成させた。