金銭債務は不可抗力をもって抗弁とすることができない
金融機関は「社会的責任」を負え!
<民法> 第419条(金銭債務の特則)
- 金銭の給付を目的とする債務の不履行については、その損害賠償の額は法定利率によって定める。ただし、約定利率が法定利率を超えるときは約定利率による。
- 前項の損害賠償については、債権者は損害の証明をすることを要しない。
- 第1項の損害賠償については、債務者は不可抗力をもって抗弁とすることができない。
たとえば商売をしていたとします。地震により注文を受けた商品が納品不能となったり、事業資金の返済ができなくなったとしましょう。この場合、契約書に「不可抗力条項」が盛り込まれていればその内容に従うことになり、通常、債務は消滅(免責)するのが一般的です。ところが、金銭債務(借金)に関しては「債務者は不可抗力をもって抗弁とすることができない」(第3項)ことになっており、返済を免れることができません。これが金銭債務の特則です。住宅ローンに関しても準用されるものと解されます。
「タイガーマスク運動」の精神を思い出し、痛み分けで難局を打開しよう
以前、金融機関を取材する機会があり、直接、住宅ローン担当者に質問したことがありました。返済義務が減免しないことについて、その時の担当者は次のように説明していました。A銀行:「不可抗力であっても顧客の都合であり、保険の範疇(はんちゅう)となる。銀行にしわ寄せが来るのは不公平だ」
B銀行:「もし、レンダー(貸し手)がリスクを負うのであれば、その分、貸出金利が高くなるのは避けられない。結局は、ボロアー(借り手)に負担が行くことになる」
確かに、金融機関側の言い分にも一理あります。不可抗力という因果関係は銀行側も同じだからです。金融機関にも何ら落ち度(過失)はありません。一方的に悪者扱いするのは考えなければいけないかもしれません。
であれば、「借り主」「貸し主」それぞれが応分に損害を負担し、たとえば住宅ローン残高の半分を免除するような方法は取れないものでしょうか。要は“折半”というわけです。借り主には一定の自己責任を負ってもらい、貸し主には公共性の強い事業(銀行業)という点から社会的責任(CSR)を負ってもらい、最終的に“痛み分け”するのです。
今回の東日本大震災は「100年に一度」といわれる未曾有の激甚災害です。過去の経験則や従来の枠組みにとらわれていては復興への道は遠ざかるばかりです。大胆な発想こそが被災者の再建に、そして経済成長にもつながります。目先の損得ばかりに終始せず、今こそ昨年末に沸き起こった「タイガーマスク運動」の精神を思い出さなければなりません。