ゲーム業界ニュース/ゲームとビジネスニュース

任天堂岩田社長の語る危機感とは(2ページ目)

2011年3月2日にサンフランシスコで行われたゲームデベロッパーズカンファレンスで、任天堂の岩田社長が行った講演がゲーム業界で話題になっています。それは、スマートフォンや、ソーシャルネットワークのゲームに対するある指摘でした。岩田社長の講演では、それらのプラットフォームは、ゲームに高い価値を必要としていない、というのです。

田下 広夢

執筆者:田下 広夢

ゲーム業界ニュースガイド

たくさんのゲームを棚に並べ、より多くの人に売る仕事

iPhoneユーザーの図

iPhoneユーザーはiPhoneを使って、いつでもApp Storeにアクセスし、ゲームを購入することができます。

アップルをゲームメーカーではなく、世界的なゲームショップだと定義すると、任天堂などのゲームメーカーとの違いがはっきりと見えてきます。アップルにとってゲームは音楽や映画と同列である商品ジャンルの1つで、それらをたくさん棚に並べ、たくさんの人をお店に呼び込み、そしてたくさん売ることこそが重要です。

iPhoneなどにゲームを含めたアプリケーションをオンライン配信するApp Storeでは、タイトル数は約35万、ダウンロード数は全世界で100億を突破しています。そのうちゲームだけに限っても、約8万タイトルと、約15億ダウンロードという、天文学的な数字でゲームを配信するサイトに成長しています。

この時、この8万タイトルの1つ1つのゲームの質が高いかどうかは、さほど問題ではありません。質の高いゲームもあれば、そうでないゲームもあって、大事なのは全体の規模が果てしなく大きいということです。極めて簡単に参入できる仕組みで全世界の人がゲームを作り、その膨大なタイトルを全世界の人に売る、それがアップルのビジネスです。

ゲームが面白いからiPhoneを買うのではなく、iPhoneを持っているからゲームを買う

DSとiPhoneの図

ゲーム専用機とiPhoneの大きな違いの1つは、ハードウェアそのものの魅力で本体を売っているところにあります。

莫大な商品数を誇り、億単位のダウンロード数によって巨大な利益を出していくアップルのロジックは、まさしく岩田社長の、スマートフォンやソーシャルネットワークにおけるゲームは「量こそ利益の手段であり、価値は大した意味を持たない」という話を象徴的に表しています。

ただ、1つ勘違いしてはいけないのは、アップルにキラーコンテンツが無いわけじゃありません。魅力的なもの、価値のあるものが何もないのに、高いお金を出して買う人はいません。ただ、それがゲームではないというだけの話です。そしてそれは、音楽でも、映画でも、便利なアプリケーションでもありません。それ以前に、コンテンツですらありません。アップルの持つ武器はハードウェア、つまりiPhoneそのものです。

アップルはハードウェアには異常なほどのこだわりを持っています。常に新しいアイデアの機能を搭載し、極限まで無駄を排除したデザインを貫きとおし、iPhoneのボディは執念深く感じられるほどまでにピカピカに磨き上げられています。そのiPhoneをユーザーは欲しがります。ゲームはおまけです。ゲームがやりたいからiPhoneを買うのではなく、iPhoneを買ったので、ゲームも遊ぶんですね。

こうしてみると、iPhoneとゲームの関係性というのが、従来のゲーム専用機におけるゲームとは全く違うことが分かります。そしてそれは、ゲームというものが新しい形で使われ始めているということでもあります。
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