土地活用のノウハウ/土地活用の基本とテクニック

土地活用の意外な落とし穴、「スケジュール管理」(1)

賃貸住宅経営を計画する場合、「春の入居者募集シーズンに間に合うように」と強く勧められることがあります。オーナーのことを考えて提案してくれる営業マンもいますが、契約を急がされることも多いものです。事業を決断するまでの考慮期間、工事契約から完成までの期間、完成してから経営が終わるまでの期間の3つについて、それぞれのスケジュールをコントロールできなければ賃貸住宅経営を成功させることはできません。

谷崎 憲一

執筆者:谷崎 憲一

土地活用ガイド

賃貸住宅経営は、30年以上続く事業です 

スケジュール管理

スケジュール管理が重要です

「オーナーさん、今週中にご決断ください! 今契約していただかないと、春の入居者募集のシーズンに間に合わなくなるので、後でとても苦労しますよ!」。ハウスメーカーの営業マンに強く迫られ、その勢いに押されたオーナーさんは「そこまで言うなら、とりあえず」と、思わず契約書に押印してしまいました。

アパートの完成は、無事に春のオンシーズンに間に合いました。しかし、当初想定していたよりも家賃が低く設定され、しかも何室かは数カ月に渡って完成後も空室のままでした。もくろんでいた収益は絵に描いた餅となり、オーナーさんは自分の判断の甘さを後から思い知ったのです。しかし、もう後戻りはできません。この賃貸住宅の経営は20年、30年と続くのです。

……こういったケース、実はかなり多いのです。

20年、30年続くということは、次の世代にも大きな影響を与える可能性があります。実際に私のところに来る相談には、先代の残した空室だらけのアパートや不良入居者が多数いるマンションなど、突き詰めれば先代の初期計画に問題のあった、負の遺産が数多く含まれています。

このオーナーさんは、営業マンに急がされたために別の専門家のアドバイスを受けることができず、適切な判断をする時間がありませんでした。もっと時間に余裕をもって準備し、冷静にじっくりと検討すべきだったのです。

土地活用を思い立ってから事業の開始まで、その間に何が起こるのか、何が必要なのか、どのくらいの期間が必要なのか。土地活用で失敗しないために、まずは「土地活用のスケジュール」をしっかりと頭に入れましょう。

今あなたは、とても息の長い事業のスタートラインに立っているのです。準備は慎重であるのに越したことはありません。賃貸経営は、大きく分けて3つのスケジュールがあります。

(1)事業を決断するまでの考える期間
(2)決断して工事契約をし、着工・上棟・完成までの期間
(3)完成して、経営が始まり終えるまでの期間

この3つのそれぞれのスケジュールをしっかりとコントロールできなければ賃貸経営を成功させることはできません。

今回は、木造2階建てで10戸程度のアパートを建てたいと考えている一人のオーナーさんを想定して、「スケジュール」のあらましをお話しします。

複数の会社に相談します

多くの相談先

建築会社以外の相談先もあります

土地活用の相談先は、色々あります。ハウスメーカー、工務店、設計事務所、コンサルティング会社、不動産会社。さらには、銀行、会計事務所、賃貸管理会社、公社・公益団体等の公的機関。

あまり多くの相談先に声をかけると、オーナーの手間もたいへんですし、何よりも節操無く複数を股にかけると、相談先も信頼して任せられている意識に欠けることがありますので、先ずは、候補として5社程度を選んで、更に充分に検討して2,3社に絞って相談するのが良いと思います。オーナーは相談先に、(1)土地活用の目的、(2)建物の希望条件、(3)大まかな資金計画(予算イメージ)などを提示します。

この際、すべての相談先に対して、同じ希望条件を伝えることがポイントです。そうしないと、各社から提案が上がってきた際に、それらの比較検討がしにくくなってしまいます。

またこの時期、オーナーは取引のある金融機関などに融資について軽く打診し、ある程度の感触を得ておくことも必要です。ただし、目ざとい金融機関の担当者が、業者を斡旋してくることもありますので、やんわりと「あなたの役割は、融資の審査」であることを告げましょう。なぜなら、この段階で金融機関が斡旋に走ると、ニュートラルな立場でなくなり、万一、斡旋先が採用されないと、へそを曲げることもあり得るからです。

ここでひとつ注意を申し上げましょう。

オーナーが相談先として選んだ相手が、ハウスメーカーや工務店といった、建築を本業としている会社の場合、彼らははじめから「建物を建てることありき」で、まい進して来るおそれがあります。「この土地での賃貸住宅経営はやや見通しが不安です」と、率直には言ってくれない可能性があるのです。

土地活用は本当に必要なのか、相続や次世代対策も考え、コインパーキングなどの可能性も含めて、必ずしも建物を建てることに固執しない相談先、たとえばコンサルティング会社や、公益法人などに打診しておくこともおすすめします。

そういった会社を相談先に含めない場合は、オーナーはより慎重に提案の内容を比較検討する必要があります。「立地や将来設計に不安もあるので、今回の事業は見合わせるのも選択肢ですよ」という判断もあるのです。

かといって、ハウスメーカーや工務店が、相談先として不適当と言っているわけではありません。真にオーナーのことを考えた提案をしてくれるか否かは、会社次第であり、担当営業マン次第です。彼らのもつ知識と経験、そして商品力は、賃貸住宅経営の大きな力となってくれます。
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